片山真理 作品集「GIFT」

THINGSText: Hikaru Nakasuji

後半は「増殖」や「抱擁」というテーマが伺える。前半と比較して光が柔らかく、外での撮影もある。


「bystander #014」(2016) © Mari Katayama

調和、受容、慈しみ、全の中の一、そういったものが滲み出ているようだ。つぎはぎして分解、再構築していく過程で、彼女の中で確かな変化が起きたに違いない。そして現れる表紙の写真。円を描くふたつの手は、過去と現在、自己と他者、それぞれをつなぎ循環させる象徴のようだ。


「Renaiss Hall #001」(2016) © Mari Katayama

両脚義足はアイデンティティの一部に過ぎず、彼女の全てではない。ただ、なしでは成り立たない重要なファクターであることも確かだ。それは彼女の生み出すアート、引いては人生そのものに多大な影響を与え、これからも与えつづけていくだろう。最後に穴から覗き込む片山の姿で締めくくられるのは、彼女のまだ見ぬ先があることを暗示している。


「Renaiss Hall #004, #003」(2016) © Mari Katayama

最後に、片山は5月から開催される今年の第58回ヴェネツィア・ビエンナーレの企画展に参加することも決まっている。この作品集と合わせてぜひチェックしてほしい。

片山真理 作品集「GIFT」
定価:5,000円(税別)
日本国内刊行日:2019年3月5日
仕様:A4、136ページ、ハードカバー、箔押し、バイリンガルテキスト
発行:ユナイテッドヴァガボンズ
https://www.unitedvagabonds.com

Text: Hikaru Nakasuji
Photos: Courtesy of the artist, © Mari Katayama

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