第20回 文化庁メディア芸術祭

HAPPENINGText: Aya Ono

愛らしいロボットと打って変わって少々不気味なロボット、アート部門優秀賞「Alter」。制作チームの石黒浩は、年齢や性別が不明な「誰でもない顔」と機械部分がむき出しの当作品について、「機械をむき出しにしても、中の制御のシステムを複雑なニューラルネットワークで制御することで、生命を持っているような作品になっている。

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『Alter』制作チーム(代表:石黒浩/池上高志)

人の生命感をロボットでどれだけ表現できるかというチャレンジ」と語る。「Alter」の周囲には照度、音、距離を測るセンサーが設置されており、その情報に基づき自律的・反応的に動く。ロボットと思えないほどしなやかに動く腕となめらかな指先を持つ「Alter」。その姿は異様でカオティックだが、「Alter」を通じて人間らしさとは何か、と考えさせられる作品であった。

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第20回文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門大賞 『シン・ゴジラ』 庵野 秀明/樋口 真嗣, © 2016 TOHO CO.,LTD.

日本では12年ぶりに制作され、2016年に多くの反響を呼んだ、庵野秀明脚本・総監督「シン・ゴジラ」は、栄えあるエンターテインメント部門大賞に選ばれた。日本に襲来したゴジラという虚構の巨大生物に官僚や政治家が立ち向かう群像劇。東京湾に突如現われた巨大生物に対する政府による緊急対策本部の設置、自衛隊への防衛出動命令の発動など、政治的視点を中心に物語は進む。「現代日本に初めてゴジラが現われた時、日本人はどう立ち向かうのか」をテーマに、その社会状況を現実に忠実に再現し、リアリティを追求した災害シミュレーションをドキュメンタリー調で描いた本作は、子どもはもちろん、大人も愉しめる作品で、特撮や怪獣映画に関心のない層からも注目を浴びた。当展では、本編の予告編映像や、登場人物の設定資料、「第2形態」から通称「第5形態」までの造形雛形が展示されていた。

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第20回文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門大賞 『君の名は。』 新海 誠, © 2016 TOHO CO., LTD. / CoMix Wave Films Inc. / KADOKAWA CORPORATION / East Japan Marketing & Communications,Inc. / AMUSE INC. / voque ting co.,ltd. / Lawson HMV Entertainment, Inc.

アニメーション部門大賞は2016年下半期、異例の大ヒットで世間を揺るがした新海誠監督の「君の名は。」。日本が誇るアニメーションのデジタル技術による圧倒的な映像美と、SFと青春ものを融合した疾走感ある無駄のないストーリー運びで、アニメーション界に大きな衝撃を与えた。当展では、本編の一部シーンの上映や、都会と田舎のシーンを切り取ったパネルが展示されていた。

アートとテクノロジーが互いに影響を与え合い、伝わり辛い科学的なテーマの作品もアート作品として表現を加えることで、“見て・感じる”ことのできる文化庁メディア芸術祭。クリエイターやアーティストの“時代(いま)”の想いが込められたそれぞれの作品が、私たちの未来を暗示しているのだろう。

第20回文化庁メディア芸術祭受賞作品展
会期:2017年9月16日(土)~28日(木)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC](東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー 4F)、東京オペラシティ アートギャラリー(東京オペラシティタワー 3F)他
※時間、休館日は会場により異なる
入場無料
主催:文化庁メディア芸術祭実行委員会
TEL:03-5459-4668(文化庁メディア芸術祭受賞作品展インフォメーション)

https://festival.j-mediaarts.jp

Text: Aya Ono

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