ミラノ・デザイン・ウィーク 2017
HAPPENINGText: Tomohiro Okada
毎年4月に開催される巨大な国際家具見本市の名称より「ミラノ・サローネ」と多くの人々が呼んできた、この街で開催される無数のデザインプレゼンテーションの祭典も、いつしか「ミラノ・デザイン・ウィーク」という名前で、世界のデザインカレンダーに飾られるようになった。
見本市会場での広大な家具見本市に留まらず、街中のあらゆる倉庫や文化施設、さらには様々なお店を間借りして展開される、世界中のメーカーやデザイナー達による、最新デザインのお披露目は、本来の姿であるインテリアに留まらず、トレンドともにあるバイヤーやインフルエンサー達の要請に応じた、様々な分野のデザインが提案されている。
もはやインテリアを求めに見本市会場に参集することなく、今のデザインを求めに街を徘徊する世界中のプロフェッショナル、そして地元や欧州全域からの新しいモノ好きによる祝祭に包まれた、トレンドの発信源となっているのだ。
そんな街に先端デザインが溢れる、今年56回目を迎えるミラノ・デザイン・ウィーク、特に人々の目を惹きつけたのは、テクノロジーに纏わるプレゼンテーションだった。近年に入り、日本の大企業を中心に、ブランドづくりをコンセプトとして、どちらかというと人に寄り添う存在であるデザインというよりも、自社技術に関連した抽象的で「なにか美しい」プレゼンテーションを競い合うような感があった。
今年に入りその傾向は、評判を呼んだ展示において、よりユーザーに近いもの、もしくは自社の技術は別とした圧倒的なスペクタクルやアトラクションで時代のデザインと共にある存在を示すプレゼンテーションへと、二分されるものになった。ともあれテクノロジーが、インテリアと同じ存在感を持つまでに到ったのである。
前者を代表するプレゼンテーションといえるのが、韓国の電機メーカーであるLGが巨大な倉庫を用いて展開した吉岡徳仁をデザイナーに迎えた展示である。吉岡は同社の戦略商品である有機EL技術を用いた、大型TV等に使われるディスプレイパネルとその光源である白色照明を用いた光の空間をつくりだし、人々を圧倒した。ディスプレイパネルを組み合わせた椅子もしくは棚のような設えは虹色の諧調を奏で、一面の壁面に設置した白色の有機EL照明が煌めく真っ白な空間を現出する。それぞれの構成要素は、LGの現在の強みとなっている主力商品そのもの。それが圧倒的な光のインスタレーションへと転化した。この美学とテクノロジーが織りなす高揚感は、多くの来場者に感銘を与えることとなり、ミラノ・デザイン・ウィークを構成する各デザイン・イベントの団体が共同で選定する「ミラノ・デザイン・アワード」の最高賞を受賞した。
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