水尻自子
PEOPLEText: Satsuki Miyanishi
作品「布団」のアイディアはどのようにして生まれたのですか?
新作にむけてのコンテやイメージスケッチを描いていたときタイトルは「健康」でした。自分のアニメ作品の肝はやっぱりどうやっても「アニメーションによって感じる感触」の部分だと思ったので感じることができる身体を持っている、それがつまり健康を表している、という意味合いでした。まず登場するモチーフとして人の身体、ケーキ、寿司、コーヒーなど分かりやすいものを選び、動きのアイディアを考えていきました。そして布団というモチーフは、睡眠と健康が直結していたり、形がクチビルに似ていたり、顔を描きたくない私の作品にとって使い勝手も良いなどいくつもの利点があり、断片的なアニメーションの動きの集積を「布団」によってうまく繋ぎ合わせることができました。
© Yoriko Mizushiri
「尻プロ」というチームについて教えて下さい。
水尻、松永、中村の3人の制作チームです。微妙に3人の得意分野が違うので(描くアニメ、コマ撮りアニメ、実写映像、イラストレーションなど)アニメに限らず制作します。
© Yoriko Mizushiri
映像作品をつくるにあたって心掛けていることは何ですか?
映像作品をつくるときは常に「1本の作品として成立する」という点を意識しています。1本の映像作品として成立するためには、簡単でわかりやすい方法として物語とか数やスピードの増減での構成とかがあると思っていますが新しい感覚を求めるならそれ以外のやり方で作品を成立させなければいけないと思っています。得体の知れない説得性を持つ作品として成立したとき、強い力をもった新しい作品になるのではと思います。
アニメーションに関して言うと、アニメーションという手法はすごく危険なものだと思っていてそれは「見ている人に伝わりやすい」とか「ごまかしやすい」という点です。「すごい描き込みだな」とか「すごい枚数を描いているんだな」とか作り手本人の努力とか作業量がモロ画面から伝わってくるのが嫌で、そういうのは見ている人にとって余計な意識でしかないと思っています。いろんな「雑念」を、アニメーションは生みやすい気がします。なので私はその「雑念」が作品を邪魔することがないように本当に必要なものだけが画面上に出なければいけないという意識でやってるつもりです。いらないものはとことんそぎ落として、むき出しになった上で作品として勝負しなければ純粋な作品と言えない気がします。
好きなアーティストやデザイナー、音楽、モノなど教えてください。
谷岡ヤスジ(漫画家)、樫木知子(画家)、BIGBANG
アニメ「レイナレイナ」(TOKYO MXテレビ)では、初の監督に挑戦したそうですが、今後挑戦してみたいことなどあれば教えて下さい。
あまり目標や夢を持たない性格なので具体的に大きなものはありませんが、作品は毎度すこしづつ自分がやったことがない表現を取り入れて挑戦しているつもりなので、マイナーチェンジを繰り返してじりじりと地味ーに作品のレベルをあげていきたいです。
第16回 文化庁メディア芸術祭受賞作品展
会期:2013年2月13日(水)~24日(日)
開館時間:10:00~18:00(金曜は20:00まで)入場は閉館の30分前まで
メイン会場:国立新美術館1階 企画展示室1E(東京都港区六本木7-22-2)
サテライト会場:シネマート六本木他
入場無料
https://j-mediaarts.jp
Text: Satsuki Miyanishi