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旧ユダヤ人女子学校

PLACEText: Kiyohide Hayashi

近年多くのギャラリーが郊外へと流出する中で、単発的ではあるがミッテにスペースを構える美術関連の施設が増えてきている。2009年、20世紀の半ばに活躍した写真家アルフレッド・エールハルトや現代に活躍する写真家の作品を展示するアルフレッド・エールハルト財団がアウグスト通りへと移ってきた。そして2010年、その目と鼻の先に現代美術だけでなく民族美術や工芸作品などの個人コレクションを展示する「ミー・コレクターズ・ルーム」もオープンした。このように最近ではミッテに再び注目が集まりつつあった。

しかしミッテの復活を語る上では再開発の波に負けることなく、この場所で今なお良質な展示を行うギャラリーや美術館を忘れてはいけない。例えば、ベルリンで最も先進的な展示を行い、またベルリン・ビエンナーレを開催する美術館「KW」はコンプレックスの向かい側にあり、その裏にはオラファー・エリアソンやリクリット・ティラバーニャなどの展示を開催するノイゲリームシュナイダーがスペースを構える。

このようなミッテの現況に旧ユダヤ人女子学校は大きな刺激を与え、新しい息吹を吹き込むことは間違いないと言って良いだろう。数年前から現れていたミッテ復活の兆しは、今回のコンプレックスの誕生によって現実になるかもしれない。だからこそ人々は多大な期待をせずにはいられないのだ。

現在ベルリンのアート・シーンは不況の下で苦しみにあえいでいる。ベルリンに支店を構えていた幾つかの有力なギャラリーは撤退しており、少なからぬギャラリーがスペースを閉じている。何よりもベルリンで毎年開催されていたアート・フェア、「アート・フォーラム・ベルリン」の終了は多くの人々に失望を与えた。そして世界的な知名度を誇るドイツ・グッケンハイム美術館の2012年末閉館のニュースは強烈な追い打ちをかける。

残念なことに国際的な美術におけるメトロ・ポリスだったベルリンは、今やヨーロッパの大都市の一つに成り下がったと言うことができるだろう。それゆえ美術関係者の過去への郷愁は非常に強い。90年代のベルリンは輝いていた。現在ベルリンで活躍するギャラリーの多くがミッテでそのキャリアを始めていた。また世界中のギャラリーがミッテに支店を開こうと願っていたという。ミッテは90年代のベルリンを牽引していたのだ。

今、ミッテがベルリンのアート・シーンの中心に戻ることは、美術業界の重心の移動を表すわけではない。人々は願っているのだ。かつてミッテの輝きが世界のアート・シーンを照らしていたように、ミッテが息を吹き返し再びベルリンの輝きが世界のアート・シーンに届くことを。

旧ユダヤ人女子学校(Ehemalige Jüdische Mädchenschule)
住所:Auguststraße 11-13, 10117 Berlin, Germany
https://www.maedchenschule.org

ミハエル・フックス・ギャラリー(Michael Fuchs Galerie)
開廊時間:10:00〜18:00(日・月曜日休廊)
TEL:+49 30 2200 2550
https://www.michaelfuchsgalerie.com

カメラ・ワーク・コンテンポラリー・ギャラリー(Camera Work Contemporary Gallery)
開廊時間:10:00〜18:00(日・月曜日休廊)
https://www.camerawork.de

EIGEN + ART Lab
開廊時間:11:00〜18:00(日・月曜日休廊)
https://www.eigen-art.com

Text: Kiyohide Hayashi

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