上海コンテンポラリー・アートフェア 2011
スー・チャン(蘇暢)の建物と都市のディティールに関するミニマルな作品は、今回アートフェアの「First Issue(上海アートフェアとアートハブアジアとの共同プロジェクトのために招待して行われた展示)」の為に特別に制作された記念的作品である。懐かしさに溢れ、街とそこに住む市民との調和のとれた関係に思いを馳せている。このような空間の中で、自転車や人間が行き交う様子は詩的な風景として構成されている。このような様子は中国の多くの都市で、すでに失われてしまった。
イエ・ナン(葉楠)の夜景写真シリーズは、高速で発展する都会、その隠れた街角で、懐中電灯を使い星空を真似してつくられたものだ。実際にこのような街角に目を向ける人は少ない。しかし、そこにはまるで銀河のようなものが出現する。それを長時間露光し、ネガに焼き付ける。美しく神秘的な光と影に隠れているのはどんよりとしたもの。言い換えるならば、それはすでに人工物と化してしまった都会の生活。この様な都会の明るい夜空の下で、私たちは自分の子供に、どれが北斗七星か、どれが織り姫でどれが彦星かを、一体どう教えられるのだろうか。
チェン・ジンユエン(陳敬元)のペインティング
台湾のアーティスト、チェン・ジンユエン(陳敬元)のペインティング。油彩と照明装置からなる作品は、「First Issue」で新しい分野を切り拓いた。チェンは流行の文化の美学やイメージから物語を綴り出す。会期中も制作が続けられており、「First Issue」の中でも特に詩情性の実験的試みが行われていた。
シエ・モーリン(謝墨凛)「∞」
シエ・モーリン(謝墨凛)は非アート的な道具を使い実験的な制作をしている。機械的なものや電子的なもの、またはベクトル化されたものに含まれた意味。それらを図面からキャンバスに移し表現をする。シエ・モーリンの作品はミニマリズムの世界に別の視点を持ち込んだ。抽象的な図面はまるで水の様な光線の動きをつくり出し、冷たい色調の幾何学模様は意外にも詩的な温かさを備えている。
今回のフェアは見所が多い。カン・シュエン(闞萱)は「島」と名付けられたミニマルな映像作品を出展した。作品の中でアーティストと作品との間に存在する心理の“漂い”効果でアーティストの強い使命感を表している。彼女は作品をゲーム形式にすることで、高品質の作品を創作するという以前の彼女から抜け出した。そのことは作品から容易に見て取れる。ミニマリズム・高い映像技術・シンプルだが豊富で強烈な視覚効果には、作家の存在感が現れている。それらは、作品の美学の精巧な処理や、メディアの把握、作品形式の技法を通して具現化されている。
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