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チェン・ラン

PEOPLEText: Ralph Yuu

私にとって油絵の勉強はとても重要な経験でした。物事の間にある関連性の見つけ方、空間形成の方法などに加えて、続けることの重要さを学びました。ある見方をするなら、私の中で大学も絵画も既に消えてしまったと言えるでしょう。コンセプトに捕われるのが良い事かどうかわかりません。制作の合間にルネサンス期の彫刻や建築における芸術的表現に触れるために出かけることがよくあるのですが、作品からはインスピレーションを感じ、常に得るものがあります。時代や作者に関係なく、本物の芸術は真に迫っていると思います。

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あなたの映像作品やインスタレーション作品には、若者や若い時期の記憶の叙述や描写を見るのですが、あなたはそれらの作品を通して、明確な物事を抽象的な表現や解釈に置き換えています。例としては「リーク・ハート」展や、上海のジェームス・コーハン・ギャラリーでの映像作品「ピジョン」がありますが、異なる映像形式とそのアイディアの関連性について教えて下さい。

実を言うと、映像作品の製作前に脚本や撮影内容を細かくつめることはありません。トライ・アンド・エラーの手法を使って撮影に挑みたいのです。次から次へと問題が生じますが、それを真正面から受け止めたいのです。とても刺激を受けますし、この方法によって作品の完成度が損なわれるとは思っていません。それどころか今ではほとんど忘れさられてしまった、インスピレーションを伴うものだと考えています。進んだテクノロジーは、私たちから微妙で繊細な物事に対する感覚を奪います。コンピュータ・テクノロジーや合成技術、そして3D映像は想像力に取って代わりました。近い将来、想像することをやめてしまった私たちの姿を想像できます。常にリアリティがあって、満たされていて、謎すらない。想像が現実に変わり、その影響が及ぶようになったとき、私たちは未来の何に対して夢を抱けばいいのですか?インスピレーションのみに頼って作品づくりをするのだと言っているわけではありません。そうではなく、インスピレーションこそがアーティストが向き合わなくてはならない、最も大きな問題だと考えているのです。

美術学院で油絵を学んだ後、あなたはシアターに俳優として参加しました。そして現在はご自身の映像作品で監督をされています。あなたはアイデンティティと役割を変え、現代アートのほとんどの分野に身を置いてきました。様々な役割の中でどのような経験をされたのでしょうか?そして、それぞれの分野を通しての変化にどのように対処されてきたのでしょうか?

ドローイングを学ぶ中で、私はダ・ヴィンチを崇拝し、フィルム制作では何をすべきなのか考えさせられました。制作活動を始めるにあたって直面した問題でした。役割とアイデンティティの概念は私にとって単純なものではありません。実際、私たちは自分自身を形づくる上で、違った生活や仕事経験に頼る必要があります。私が絵画を学んだのは植物の絵を描くためではなく、世界を構成する細かい要素や法則を理解し見つめるためです。多くの映画や本に触れる事で、私たちは人がそれぞれ違うスタンダードを持っているという事を理解します。あなたには憧れる存在がいるでしょう。記憶に深く刻まれた情景や言葉のやりとりもあるでしょう。それはあなたが覚えていたい人物たちとストーリーでしょうか。事実私たちはこのような体験と自分自身を照らし合わせます。崇拝する対象をもつと同時に、あなたは一人の登場人物として入り込みます。あなたが崇拝し続けているものや、信仰しているものの現実世界で参考になるような行為や観点、これらは、あなたの心の中の世界に依存して影響を及ぼします。当然私たちは、本当の自分自身に引き合わせてくれる信仰と、あこがれの対象が必要になるのです。

Text: Ralph Yuu
Translation: Kazuyuki Yoshimura

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