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HAPPENINGText: Tatsuhiko Akutsu

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PUBLIC/IMAGE.METHOD セッション4「辻川幸一郎 x 伊藤直樹」

セッション4は、辻川幸一郎伊藤直樹の対談。コーネリアスの映像制作を始め、アートディレクション、MV、CM、ショートムービーなど多様なフィールドで映像にかかわる辻川幸一郎と、LOVE DISTANCEBIG SHADOWUNIQLO MARCHなどCMやウェブ、インスタレーションまで媒体にとらわれない企画とデザインを展開する伊藤直樹が、「インタラクティブの自由」について話を繰り広げた。

インタラクティブというと、何となく“自由”や“直感的”などの言葉を連想してしまうが、2人はあえて「インタラクティブである=制限する」というアイディアを提唱する。伊藤は、かつて「お化け屋敷は何故面白いか?」ということを深く考えた。そして、「入り口と出口があるから」という極めてシンプルな結論を導き出した。辻川は、『一本の映画を、常に早送り、巻き戻ししていたら非常につまらないものになってしまう』と言う。

一見関係性がないように思えるこの2つのエピソードだが、実は“制限”という意味で共通する思想がある。オーディエンスは、ある意味で「任意性を制限されている=自由を奪われている」からこそ、その中で感情を揺さぶられる何かを感じることができるというのだ。インタラクティブの分野でも、ここを履き違えてしまうとユーザーに間違った自由を与えることになり、結果的に何らかの強い印象を刻み付けることはできない。実際の現場で、常にオーディエンスに対する訴求力というものを研究している彼らならではの思考である。

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PUBLIC/IMAGE.METHOD セッション5「中村勇吾 x 富野由悠季」

ラストを飾ったのは、世界的インタラクティブデザイナー中村勇吾と、彼がかねてからファンであったアニメ界の巨匠、富野由悠季の2人。独自の視点からアニメーションの動きの機能を見つめ続けるプロフェッショナルたちが、「動きの奥にあるもの」について語った。

道具が便利になり一人でもアニメが作れるこんな時代に、富野はあえて『ツールの中で踊らされる素人が増えている』と警鐘を鳴らす。“自分が好きなもの=大衆に受け入れられるもの”という公式は決して成り立たない。彼が監督として世に送り出した「機動戦士ガンダム」や「聖戦士ダンバイン」など、日本のアニメーションの歴史に名を刻んできたこれらの作品たち。そこには、プロフェッショナルでしか成し得ない孤高のクリエイティビティが存在する。そして、そのクリエイティビティを支えているのは、他でもない”絵心”。『言葉では説明できないその”絵心”こそが、動きの奥には存在しなければいけないのだ』と富野は語る。

そして、インタラクティブデザインのパイオニアとしてウェブ上であらゆる動きの機能を表現してきた中村勇吾は、その動きの奥にある”人の存在”に注目する。『アニメの語源であるアニミズム=魂の存在こそが、その動きを人間の感情に作用するものにする源である』と語る中村。そのアイディアは、彼の最近の作品「iida」や「UT ZOOM!」においても、物理的/身体的なモーションピクチャとして反映されていると言える。

多様なデジタルモーションの表現が可能になった今だからこそ、(ある意味では原点回帰的に)人間が直感的にキモチイイと感じることができる動きに注目が集まっている。やはりその動きの作画というプロセスにおいても、試行錯誤を重ねたプロフェッショナルでしかできない表現があり、それを成し遂げるには繊細すぎるほどの神経が要求されている。

全6組、違ったフィールドで活躍するアーティスト同士の対談という形で行われたこのカンファレンス。PUBLIC/IMAGEがこのイベントを、このタイミングで開催したことは、アーティストの選択、内容、そして対談という形式という観点から見ても、結果的に大きな成功を収めたのではないだろうか。この動きは日本のアート/デザインシーンにおいても更に広がっていくべき流れであり、同時に溢れかえっていた会場を見ても分かる通り、大衆が求めている流れでもある。
次回は、どんなメソッドで我々に教育と娯楽を与えてくれるのだろうか。今後もPUBLIC/IMAGE.LABELの動きに目が離せない。

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日時:2009年5月16日(土)14:00〜20:00
会場:ベルサール六本木
主催:ANSWR INC.
企画:PUBLIC/IMAGE.LABEL
協賛:ADOBE SYSTEMS
https://www.public-image.org

Text: Tatsuhiko Akutsu

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