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マルコス・ウェスカンプ

PEOPLEText: Ayako Yamatomo

制作で最も重視しているのは「コンセプト」だと聞いています。以下のプロジェクトのコンセプトを教えていただけますか?また、それぞれのアイディアはどのように生まれたのでしょうか?

ソーシャル・サークル」のアイディアは、ある日会議に出席していたときに思いつきました。会議中に交わされる会話が、とても階層的であることに気付いたのです。またそこでは、会話内容や実際に使われる言葉以外に、ボディーランゲージ、服装、席につく場所、上下関係、人間の心理など、様々な情報があり、こういった情報も、そこで何が話されているのかを知る重要な鍵となります。

逆に、ほとんど情報のみで行なわれるオンラインでのディスカッション、例えばメーリングリストやチャットは、このような情報が見えてきません。 マサチューセッツ工科大学では、この点に関して様々な角度から研究を重ねています。このプロジェクトも、この問題にアプローチをするものです。しかし、その対象はメーリングリストのみで、リアルタイムで新しい情報を更新しながら、メーリングリストの“今”の状況をリアルタイムで映し出していくというものです。また、このプロジェクトは、メーリングリストは閉ざされたディスカッションの場であるというパラダイムを、オープンなものへと変えます。たとえ少々過激なメーリングリストであっても、誰かが選んだ訳でもなく自然に、必ずそれを中和する存在が現れます。その人は、最も多くのスレッドで話題を投げかけ、コメントをします。初めて分析したメーリングリストの結果が、このようにグラフに現れた時に、とても興味深く感じました。

他に、大規模なディスカッションの始まりを目撃しました。好んで積極的に参加する人もいれば、逆に突然いなくなってしまう人もいます。このプロジェクトは、プライベートな空間を覗かれているようだと感じ、嫌う人もいます。またある人は、メールを沢山送り、ほとんどのスレッドに参加し、グラフの中心になるべく戦う人もいれば、自分が中心にいることに気付いて、恥ずかしくなるのか、ゆっくりと姿を消してしまう人もいます。

「ツリーマップ」は新しいアイディアではありません。米国メリーランド大学のベン・シュナイダーマン教授が一人の著者として参加している「Readings in Information Visualization」という本で、ツリーマップを知りました。1990年、彼はハードディスクの中にあるディレクトリと、ファイルやフォルダの状態を表すため、新しいビジュアルアルゴリズムを生み出しました。ツリーマップは、ピエト・モンドリアンの作品と良く似ています。僕は、そのビジュアルのインパクト、科学とアートのミックスに惹かれ熱心に研究しました。初めてグーグルを見た時、その集合体の中でどのように情報が置かれているかに気付き、すぐにこれら何千ものニュースがツリーマップを通して見ることができたらどうだろうと思いました。

ニュースマップ」では、それぞれの四角形の大きさはそのニュースに関連する記事がどのくらい存在するかによって決まります。ゴラン・レビン教授は、見慣れたものを全く違う角度から見る為には、情報をビジュアルで再構築することが必要だと指摘しています。「ニュースマップ」は、データと、ニュースメディアに存在する目に見えないパターンとの関連をビジュアルで表現するアプリケーションです。これは、ニュースを均等な視点から見る為のものではなく、逆にニュースの比重の違いを強調するものです。

これからビジュアル化してみたい情報はありますか?

難しい質問ですね。世の中には目に見えないあまりに多くの情報がありすぎます。人類全体が1時間に生み出す情報量を考えてみてください。そしてその量を1年分で考えると…もう膨大な量です。

絶対にやってみたいと思っているのは、状況に応じて変化する情報のインスタレーションです。これが現在少し取りかかっており、最も興味のある分野です。なかなか日本でインスタレーションできる場所を探すのは難しいですが。

シフトのカバーデザインのコンセプトを教えてください。

これは「セルオートマトン」に近い動きを持つ抽象的な構図になっています。このアイディアは、格子状のセルそれぞれが隣り合うものの明度を平均化するために常に更新されるというものです。外部の要素が加わり全体のバランスが崩れると、全てのセルが変動し、あるいは隣のセルの明度にシフトしていくのです。

イタリアのデザイン事情について教えてください。

今は、イタリアの北部、イタリア−フランス−スイスにまたがるアルプスのそばに住んでいます。ミラノやトリノにも近いです。東京からアルプスへ、大きな変化でしょ。ここではウェブ界と関わりを持っていませんが、大きな都市に行くたびに、空気の中にデザインを感じています。どこにいてもそうですが。

読者にメッセージをお願いします。

近いうちに東京遊びに行くよ〜!

Text: Ayako Yamatomo

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