肖像写真展「顔について」
HAPPENINGText: Sari Uchida
デジタル処理を施して顔の造作を取り去った作品。いわゆる「のっぺらぼう」だが、まるで皮膚という包装紙にくるまれた物体のようである。人間の個性を形作る顔の造作が無くなると、一体どうやってアイデンティティーを維持するのだろう?
Aziz + Cucher “Rick from the series DYSTOPIA”, 1994 © Aziz + Cucher 1994/2004
1分間撮影で気軽にとれるパスポートサイズの証明写真。一人のモデル(作家本人?)が、100通りに扮装しているが、1回に4枚撮れることから、タイトルにある400ものID(アイデンティティ)に繋がるのだろうか。しかしどれをとっても全て元は同一人物。一体どれが一番本人に近いのだろうか。そしてもし私が同じことを試みたとして一体幾つのアイデンティティをみつけることが可能なのだろう…。
Tomoko Sawada “ID 400”, 1998 © Tomoko Sawada
アイディアやコンピューター処理などの技術を凝らした作品が大半を占めていたが、会場の一角にはそのまま顔を捉えた作品も展示されていた。しかし被写体は奇形児らしき子供の頭部や肌に無数の黒い斑点がある女性、はたまた既に亡くなった人(つまり死体)がきれいに着飾り、目を閉じて安らかな笑みをたたえているなど、見るうちに居心地の悪さを感じずにはいられなくなる。対象となった人物の心の内まで伝わって来てしまうのだ。結局、一番インパクトが強いのは、こうした「ストレート」な作品であるような気がした。
About Face: Photography and the Death of the Portrait
会期:2004年6月24日(木)〜9月5日(日)
会場:Hayward Gallery
住所:South Bank Centre, London SE1 8XX
TEL:+44 (0)20 3879 9555
https://www.hayward.org.uk
Text: Sari Uchida
Photos: Sari Uchida
Additional Photos: Courtesy of Hayward Gallery © the artists