MOMA・イン・ベルリン
本やポスターや何らかの複写された形で何度も見ている作品でも、実物を見るといつでもびっくりするほど新鮮なのだ。しかし、毎日ずらりと続いている長蛇の列(最高では4時間待ちらしい)、記録破りの来客数(最初の20日間で10万人以上来客)、無視できない話題性などを考えると、疑問に思ってしまう:ベルリナー(とその観光客)は前からアートをそれほど愛していたのか?
本展では多数の現代アートの名士を引き合わせている:セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンとモネ、ピカソとマティス、カディンスキーとシャガール、ミロとダリ。デ・クーニング、ポロック、ホッパー、ニューマンなどアメリカの現代画家、ポップアーティストのウォーホルやリキテンスタイン。フラヴィン、ジャッド、ヘッセのスカルプチャー、そして現地出身のオットー・ディックス、マックス・ベックマン、ゲオルゲ・グロスなどが含まれている。
これらの作品の一つ一つの筆遣い、色彩、規模や大きさを目にすると大きな充足感に満ちてくる。本来アートがそうであるべきの様に、観客に喜びと刺激を与えることができるのは間違いないであろう。しかし何時間も並んでやっとこの美術王国に入ることができた客にとって、「ビーン・ゼア、ダン・ザット(そこに行って、あれも見た)」という思いに浸らないではいられないのでは?
大声で自慢する人もいれば心の中でニヤニヤ笑う人もいるだろうが、やはり「ダンス」の実物を見た!」という事実にはうぬぼれは付き物なのだ。「星月夜」や「ガス」についても同じ、これらの名作をいっぺんに拝むことができるならなおさら!
これがこの美術展の魅力なのかもしれない。エッフェル塔や、ビッグベンや、ブランデンブルグ門のように、美術展自体が観光名所になり、現地の人も観光客も話題についていくため、後の会話のネタにするために、欠かせない見物となったのである。MoMAに行った!という事実にも、うぬぼれは付き物だったのだ。
もちろん、それだけではない。MoMA・イン・ベルリンは、現代美術の百科事典をミースの広くはないが完璧な下部構造に要約したようなもので、これがまた魅力的だ。大規模で包括的なテート・モダンやニューヨークのMoMAに比べると、本展は、現代美術の要点を選び抜き、その世界をコンパクトに一周できるように演出している。ビートルズのヒットを集めたコンピレーション・アルバムのように、全ての作品の重大さが保証されているのだ。
個人的に一番感動したのは、クリムトの「Hope II」の前に立って、見事に美しく描かれた女の人の肌のトーンを見た瞬間だった。そのためなら何時間でも並んでもいいかもしれない。
MoMA in Berlin
会期:2004年2月20日(金)〜9月19日(日)
会場:新ナショナル・ギャラリー
住所:Potsdamer Strasse 50, 10785 Berlin
https://www.das-moma-in-berlin.de
Text: Kristy Kagari Sakai
Photos: Kristy Kagari Sakai
Additional photos courtesy of Jens Liebchen