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フローリアン・シューミット

PEOPLEText: Sachiko Kurashina

質の高いサイトを多く手掛けていらっしゃいますが、クライアントワークをする際の、Hi-ReS!ならではのオリジナルプロセスはどのようなものでしょうか?

美的アングルからではなく、コンセプチュアルな面からそのプロジェクトを始めてみる、というのが私達の活動プロセスで共通して言える性質です。どうやってそれを伝えたいかを考えるよりも先に、何を伝えたいのかを明確にすることの方が大切だと考えています。だからこそ、プロジェクトを進める段階で、かなりの規模で私達に自由が許されるかどうかは、すごく重要です。今のところ、とても良いクライアントに恵まれているので、その点では満たされています。

シンプルなアイディアが私達の活動の基本(もちろん、いつもというわけではないですが)。シンプルなアイディアとは、そのプロジェクトを開始した最初の2、3日中に浮かんだアイディアのことです。それからそのアイディアを再考慮し、細かい部分を決めていく。そうしていく内に、徐々にですが、コンセプトにぴったりの美的感覚が生まれて来ます。そのアイディアが作業開始1週間後、あるいは2週間後でも際立ったものなら、それはそれで、そのアイディアは価値があるんだな、と判断します。たとえそれが深夜であろう、みんなが休んでいる週末であろうと、アイディアが良いものであれば「よし、これはイケル。おもしろくなりそう。」って、思うじゃないですか。何となく確信がなかったり、グラフィックをとりあえず利用して、コンセプトに発生したギャップを埋めるようなプロジェクトは、早い段階から遂行するべきではないものだと思いますよ。

「ビジネス・オブ・ストレンジャー」や「ドニー・ダーコ」など、映画関連のサイトも多く手掛けていますが、スクリプトや演出など映画関連の仕事の経験があって、それが活かされているのでしょうか?

特に私のバックグランドが映画なので、これはいい質問ですね。インタラクティブ・デザインを始める前は、ミュージック・ビデオやCMのディレクションを仕事としていました。ウェブに関しては、何か物語を伝え続けたいと思えるような場所ですね。しかも、いろいろな方法で、というのがポイントです。物語は私達の作品の中では、今でも重要点のひとつです。ひとつの大きなスト−リを伝えるのを目的に、メディアにある沢山のフォームを取り込んだり、合体させたりしながら、ウェブを越えて物語を拡張してみたい。でも実際にこれを実行に移すには、チャンスを快く与えてくれるクライアントが必要なんですけどね。いわゆるよくある、映画制作の作業にも興味があります。ただ、時間を見つけることができないでいるだけです。

昨年11月に東京で行われたマクロメディア・デベロッパー・カンファレンスなど、カンファレンスへも積極的に参加されているようですが、世界中を飛び回って、どうですか?

これはもう、作品を制作したことで、まったく期待していなかったところから福が舞い込んだ、という感じですね。いつもの日常とは全然違って、スクリーンの前にいなければいけないので、緊張のひととき、というか。どこか遠くにいくのはすごくいいこと。旅ができたり、知らなかった文化に遭遇できるのは、やっぱりとても素晴らしいことです。似たような情熱を持つ人との出会いや、そういった人たちとお互いの意見を交換できたりするのが一番の醍醐味ではないかと思います。今までいろいろな所に行かせてもらいましたが、東京はその中でもお気に入りの街のひとつ。街だけではなく、そこで一緒に過ごした人たちにすっかり恋をしちゃった感じです。

マッシヴ・アタックのサイトについて教えて下さい。制作プロセスや、このサイトでしか体験できない仕掛けなどはあるのでしょうか?

マッシヴ・アタックに関われたことは、いろんな意味で私達の夢がかなったような出来事でした。当初からこのバンドの大ファンだったということもあったのですが、他の人のクリエイティブなやり方を、広い心で評価してくれる人たちだというのを知っていましたからね。サイトの大部分は、3D(ロバート・デル・ナージャ)とのコラボレーションを通じて制作しました。彼はすごく優秀なアーティストで、UVAと共同で、ライブショーのビジュアルを制作した人物です。マッシブ・アタックの最新アルバムのジャケットデザインは、トム・ヒングストンが担当しました。サイト自体は、データを伝えたり表したりする、というアイディアがベースとなっています。その両方とも、バンドや外部の世界に関連したものです。

このアイディアを達成するために、かなり複雑なサブミッション・システムを制作しました。これはマッシヴ・アタック自身がツアー中でも、常にサイトを更新できるシステムで、彼らがどこにいても、サウンド、ビデオ、イメージをアップロードすることができます。この機能は、ニュースの画像、地震、株式情報、キーワード、色などを紹介するウェブを検索するスクリプトから取得した、ライブ・データを元に制作されたものです。サイトには常に2つの面が用意されています。一つは純真な面。もう一つは経験的な面です。アクセスしづらいものや、同じデータでも質を悪化させるようなバージョンのものを、原料としてのデータとミックスしています。またこのサイトでは、彼らが何をどう感じ取っているかがベースとなった、バンドメンバーの本音も反映されています。これは現在進行形のプロジェクトなので、今でもマッシヴ・アタックのサイトにはコンテンツを追加しています。例えば今、サイトから自分の好きなライブに向けてメッセージを送ることができるのですが、これらのメッセージは後々、ライブが始まる前とライブ中に、巨大なLCDのスクリーンに写し出される予定です。

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