クラブ・プラーク

HAPPENINGText: Bastiaan Rijkers

2002年の初春、デザイナーでもありアーティストのロースジ・クラップは、その頃はまだ知られていはいなかったクラブ・プラークに既に取り掛かっていた。ある晩のこと。アーティスト、ミュージシャン、デザイナーなど、総計20名にも及ぶ彼女の友だちが招待され、この自主的でもあるクラブ・プラークのフォームを作り、何かアクションを起こすことを誓う。そして彼らが自らに与えた課題は「この組織化されすぎた街において失われた公共の場を取り戻すこと」である。

毎月第2月曜に会合を開き、これからの展開について論議を重ね思索を繰り返した。議題として扱われたのは、公共の場とは何か?それはどこから始まり、どこで終わるのか?など。最近行われた会合で話し合われたのは、ランダムテキストについて。奇妙なテキストにある美しさや、言葉の思いがけない組み合わせなどが、公共の場ではよく見受けることができるからである。つまり、クラブ・プラーク自体が、意見、そして新たなアイディアを創造し、発信し、形付けているのである。何かがこの世界で行われようとしている時こそ、その裏側では誰かがアイディアや思いを抱え込んでいるのだ。

一番最近の奇抜なフライヤーポスターは、ベルリンで配付された。クンスラーハウス・ベタニエンのアガタ・ズワイヤージンスカによるものだ。クラブ・プラークには、14名のアーティストが招待され「ハーフウェイ・ホーム」というプロジェクトに参加。このプロジェクトは、ある場所と場所の間に住んでいたり、母国や故郷ではないところに住んでいる人たちの「何かに属するという気持ち」を定義し、また発見、実現させるものである。そして今回このプロジェクトに参加したアーティスト全員もまた、彼らの故郷から離れて暮らしている人たちばかりなのである。

アムステルダムからのアーティスト達は、ベルリン市内の各所で貼られるフライヤーポスター13作品を制作。そのポスターのメッセージに合った場所探しに日々が費やされた。例えばオディロ・ジーロのポスターはベルリンの壁に貼られたのだが、ポスターを貼ること自体が、何だか時に政治的な声明を述べているような気分になる。ベルリンの壁が崩壊する2日前にアルブレヒト・ハウスホーファーが射殺された場所に、詩がつけれられたヨーリーのポスターを張ることもまた、かなり感情をゆさぶられる出来事でもあった。

特別なポスターの一枚として選ばれたのは、サウンドアーティストのナタリー・ブライズの作品。このポスターを貼る場所として選ばれたのが、ザ・ハンサ・スタジオ。ここはデヴィッド・ボウイが「ヒーロー」を収録したスタジオであり、誰もが畏敬の念のもとこの作業に参加した。ほとんど全ての通りに重い歴史を見い出すことができることが、それぞれのポスターにとってベストな場所を探すうちに感じたことである。最後のポスター2枚を手掛けたのはルースジとアガタ。二人とも、ポスターの中には自画像を取り込んだ。アガタがこのポスターの制作に取り掛かったのはベルリンの東に位置する自宅にて。一方ルースジはベルリン西部にある臨時用の自宅でだ。お互いの自宅の中間地点で二人は会い、そしてその場所こそ、この2つのポスターが寄り添うように貼られている場所である。

大成功のうちに幕を閉じたこのプロジェクト。詳しい内容はサイトで見ることができる。10月9日から13日までは、「アーバン・ドリフト」の開催期間中にカフェ・モスクワにて全ポスターが展示される。

既に次のプロジェクトも始動し始めている。アムステルダム市内にある高層ビルに対するニーズを考慮するものだ。ベルリン東部にあるベルリンテレビ塔を描写し、祝うことを目的としたポスターシリーズも制作される予定。そしてこのポスターも、2、3ヶ月以内にアムステルダムのどこかで見つけることができるようになるのだ。これからは、クラブ・プラークによるフライヤーポスターには必ず彼らのロゴが掲載され、それによって彼らの言葉が伝わり、名前の認知度も増すことだろう。クラブ・プラークには要注意。次にはいったい何が起こるのだろうか!

Text: Bastiaan Rijkers
Translation: Sachiko Kurashina

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