篠田千明「ZOO」

HAPPENINGText: Noriko Ishimizu

公演終了後に演出の篠田氏に、東京での公演についてメールインタビューした。

千秋楽を迎えたお気持ちを聞かせてください。

事故なく終わったことにまず一番ホッとしていました。

篠田さんが演出を行なった「ZOO」は、チリの戯曲をどのようにアレンジしたものなのでしょうか?

本作ではアレンジ、というより、原作では西洋ー非西洋、もしくは植民地主義にまつわる話だったものを、原作の原典にまで戻り、人間全体の話に変えました。

本公演に見られる篠田さんの演出の特徴とはどのようなところでしょうか?

沢山の情報を有機的に配置し、ドラマを構造部分までに落とし込むところだと思います。

タイやバンコクへ拠点を移したことで、演出に何か変化は?

バンコクでの経験は、今回の作品では、原作をほどいていく過程で、自分のリアリティを反映する意味で影響しています。

「ZOO」の公演はどのようにして企画され、開催に至ったのですか?

2014年にドイツのテアター・デルベルト(世界演劇祭)にて、原作の「ZOO」を観劇しその体験が面白かったので、その際に一緒にいた京都エクスペリメントのディレクターである橋本裕介氏に、もしこの作品を京都に呼ぶようなことがあれば是非何かやらせてください、と直訴しました!
その後、2016年春にはマヌエラのオリジナルの「ZOO」を上演、秋には篠田千明版の「ZOO」を上演する、という形になりました。
オリジナル版の「ZOO」は、チリのカンパニーがヨーロッパでの上演をする、という前提で作られたものであり、最後の視点の転倒もその文脈自体を仕掛けとして使われており、日本人が日本で上演する際に、どのようにやろうか、というのが最初の課題になりました。その時には、ドラマトゥルクの岸本佳子、アートディレクターのたかくらかずき、照明の筆谷亮也という初期メンバーは集まっていたのですが、たかくらくんからの強い要望があり、人が人を見る仕掛けとしてVRを取り入れることになり、VRディレクターとして、ゴッドスコーピオンが参加することになりました。

京都公演から東京公演に会場が変わり、何か内容に変更はありましたか?

会場が京都のときとは全く違う場所である、ということが一番の違いです。京都公演のときは一望できる視点を観客は持とうとすれば持つことができましたが、東京公演では全体をとらえることは難しくなった代わりに、常に観客が立ち上がり動いている状態だったので、コロス(風景やエキストラのような役割)としての観客が誰の視点からも目に入ることになり、人が人を見る、のを見るという部分は、東京公演のほうが実現されていたように思います。

映像について演出の方法に変更は?

会場に合わせて作り変えた部分と、提示の仕方を大幅に変えた部分があります。白幕に映写しそれを潜って観客が入ること、紗幕(しゃまく)を使いその後ろの空間を隠しステージとして位置付けること、技術監督であるえんちゃん(遠藤豊)の助けを借りて会場中に散らばせたブラウン管にもVRの映像が流れること、と質感の違う映像の見せ方をしたことで、世界観の層がより厚みを増しました。

東京であった反響の中で、京都と違うものはありましたか?

反響ではなく反応ですが、東京のお客さんの方が、がつがつ起こってることに対して反応していたように思います。京都では座ろうと思えば座って見られるけれど、東京では立ち上がり動かないと見られないことで起きている現象だとは思いますが。

エサを食べさせるなどの工程は、観客も鑑賞後に考えさせられることが多かったと思います。来場者の感想が二分しているとも聞きました。このことに関してどのようにお感じでしょうか?

私自身も、この作品をやると人間が好きになったり嫌いになったりします。

観客が会場を周遊する舞台の難しさとは?

荷物を預けてもらわないといけないので受付が大変だったと思いますが、本編に関して難しさは感じなかったです。

参加型の舞台として、終演後に来場者にどのようなものを持ち帰ってほしいとお考えでしたか?

チケット代わりに付けるタグは切らないと外せない仕様になっています。そのタグを外すときの感覚も含めて公演だと思います。

東京公演では篠田氏が指摘するように、観客は積極的に写真を撮り、会場を散策していた。来場者は高みの見物を決め込んではいられない。手首にタグが付いたまま帰る道で、不可解な奇妙な余韻を味わう公演となった。

篠田千明「ZOO」(TPAMフリンジ参加作品)
会期:2018年2月15日(木)〜18日(日)
出演:福原冠(範宙遊泳)、増田美佳、Yamuna Bambi Valenta、竹田靖
原作:マヌエラ・インファンテ
ドラマトゥルク・翻訳:岸本佳子
アートディレクター:たかくらかずき(範宙遊泳)
制作:芝田江梨
製作:KYOTO EXPERIMENT
主催・企画・演出:篠田千明
助成:公益財団法人セゾン文化財団、アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
協力:BUoY、範宙遊泳、プリッシマ
https://tokyozoo.tokyo

Text: Noriko Ishimizu

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