シンガポール:インサイド・アウト

HAPPENINGText: Haru Murayama

パンフレットを受け取り中に入ると、ずらっと並べられた白いだるまが目に飛び込んできた。向かいには木で作られた長テーブルが置かれ、まるで屋台の一角のような雰囲気を醸し出している。

「MANY ICONS, ONE SINGAPORE(多くのアイコン、1つのシンガポール)」は、“地域のものづくりの場”として2011年より石巻市で活動を続けるDIYスタジオ・石巻工房と、シンガポールを拠点とするギャラリーショップ・スーパーママによるコラボレーション作品だ。

SUPERMAMA x ISHINOMAKI LAB (credits to STB)
“MANY ICONS, ONE SINGAPORE”, Supermama × Ishimaki Lab, Photo © Singapore Tourism Board

本展のポスターにも使用された、マーライオンをモチーフにした白いだるまをはじめ、屋台料理をプリントしたテーブルクロス、シンガポールの建造物を描いた有田焼の小皿などを多数展示。日本とシンガポールの文化的アイコンであるキッチュなお土産品をオマージュした作品を通じて、都市における希望や再生といった価値の共通性を模索した。

階段を上ると、銀色に輝く3つのドームと、さまざまな花の入ったプラスチックプレートが吊るされた作品空間が眼前に現れる。照明に照らされて輝くシルバーとプラスチックが生み出す近未来的な雰囲気によってそれ自体がまるで一つの作品のように見えるが、それぞれ異なるアーティストによる二つの作品だ。

MINDSCAPE x EACH SOUND IS A FLOWER (credits to STB)
“MINDSCAPE”, Zul Mahmod × “EACH SOUND IS A FLOWER”, Plantica, Photo © Singapore Tourism Board

シンガポールの雑踏の音が流れる銀色の音響ドームは、サウンドアーティスト・ズル・マーモドによる「MINDSCAPE/マインドスケープ」だ。ドーム内の音と実際の空間の雑踏とが混ざり合うことで、現代社会のリアルとフィクションの間に存在する音の葛藤を考察する作品である。そして色とりどりの押し花を封じ込めたプラスチックプレートによるインスタレーションは、フローラルアーティスト・プランティカによる「EACH SOUND IS A FLOWER/それぞれの音は花である」だ。花や葉が入れられたプレートは、人々に合わせて揺れ、周り、空間にさまざまな動きを生み出していた。

この“音”をテーマにした二つの作品から構成された空間の中では、聴覚的だけでなく視覚的にも音を体感することができた。またフラワーインスタレーションの中で聴く雑踏の音が、まるで花の声であるかのような錯覚も覚え、自身を取り巻く音の多様さや不思議さについても、改めて考えさせられた。

さらに階段を上ると、色彩の洪水のような部屋が現れた。パフォーマンスアーティスト・ダニエル・コック(ディスコダニー)と清水美帆のコラボレーションによる作品「XHE」のために、清水が発表したインスタレーション空間だ。

xhe (credit to Christopher Sim)
“XHE”, Disko Danny × Miho Shimizu, Photo © Christopher Sim

三角形に切り取られたビビッドな色で埋め尽くされた空間は、大きな鏡や鏡面でできたポール、さまざまな形状のクッションと相まって、そこがどこなのかを見失うような錯覚を生む。色彩の多い空間でありながらもどこか落ち着く雰囲気があり、その場に座り込んでおしゃべりをしたり、ぼーっとして過ごす人の姿もちらほらと見られた。また、残念ながら観ることができなかったのだが、会期中は不定期にダニエル・コックによる即興のパフォーマンスも行われていた。

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