シンガポール:インサイド・アウト 2017

HAPPENINGText: Haru Murayama

シンガポールのクリエイターを世界のアート・シーンで紹介する「シンガポール:インサイド・アウト」が、東京のバンクギャラリーにて8月25日から27日の3日間に渡り開催された。様々な分野で活躍するシンガポールのクリエイターやアーティストの作品を集めた国際的なアート展である本展は、2015年に初開催され、北京、ロンドン、ニューヨークを巡回。今回は東京とシドニーを巡る予定となっており、国境を越えたコラボレーションによる作品を数多く展示した。

All artists (credits to STB)
Photo © Singapore Tourism Board

都市ごとに異なる作品展示を行ってきた本展の、東京会場でのテーマは「ハイパーシティ」。日本とシンガポールとの対話にフォーカスしながら、大都市に住むことの意味や、様々な文化的現象についての考察を行った。また、会場を「都市の印象(到着)」、「変わりゆく都市(遭遇)」、「ハイパーリアルシティ(新しい発展」という3つのチャプターに分割。観客が各チャプターを通じて、新しい表現方法のインスピレーションを探れるような構成とした。

最終日の18時を少し過ぎた頃、オーロラに輝く衣装を身に着けた6人の男女が会場広場に現れた。沈み始めた夕日に照らされながら音に合わせて歩き、踊り、手を繋いでくるくると回る。シンガポール出身のファッションスタイリスト兼デザイナーであるジョサイア・チュアによるファッションショーは、道行く人々の目をくぎ付けにした。

JOSIAH CHUA x MEDIA ART NEXUS (credits to NTU ADM)
“HIKARI”, Josiah Chua × Media Art Nexus, Photo © NTU ADM

2018年カプセルコレクションの一部である「HIKARI/光」は、テレビアニメ「美少女戦士セーラームーン」からインスピレーションを受けて制作されたものだ。輝きながらキャラクターたちが変身するシーンを落とし込んだ作品は、オーロラに輝く甲冑のようなファブリックが神秘的に身体を包み込むデザインとなっており、夏の夕日を受けてキラキラと輝きながらその場を幻想的に彩った。

続いてとっぷりと日が暮れた会場広場のスクリーンに、霧雨のような水のカーテンが引かれ、鮮やかな色彩の揺れ動くホログラフイメージが映し出される。クリエイティブディレクター・クララ・イーと、照明デザイナー・矢野大輔とのコラボレーションによる「HAPPENSTANCE/偶然の出来事」だ。光や色、物質の質感を通して、周辺空間と人の間に存在する関係性を描き出すことを目的として作られたインスタレーションである。

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“HAPPENSTANCE”, Clara Yee × Daisuke Yano, Photo © Haru Murayama

スクリーンと水のカーテンで生み出されるレイヤーの中に映像を投影し、その場所に存在する空間の二次元的/三次元的な側面を一つの場に描くことで、空間に対する新たな視点を提示した。また、光と色彩が写し出された水滴は触れてみたくなるような美しさがあり、小さな子供が集まって光を捕まえようと飛び跳ねる姿もあった。

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