宮島達男「芸術論」

THINGSText: Ayumi Yakura

第2章「日々の言葉」は、宮島が発信した2010~16年までのツイートの抜粋だ。2006年~16年に東北芸術工科大学副学長、2012年~16年には京都造形芸術大学副学長を務め、教育の現場において「言葉」で思いを伝えることが多くなった宮島がツイッター(@tatsuomiyajima)を始めた理由は、『茂木健一郎さんから「若い人たちが使っている」との勧めで、少しでも学生たちの役に立てばとの思いから』であり、『私自身、何十年もかかって体得した知見を開示し、その先へ進んでもらいたいと願うからだ』という。

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左ページ:Idea Drawing for “Heathrow Airport Terminal 2”, 2010 / 右ページ:Study of “脳のある風景”, 1993

将来的に学生がアーティストとして世に出れば、作品制作への行き詰まりや、海外進出等で、様々な困難を乗り越える力が必要になる。宮島は、『大人の責任とは、若者たちの揺るぎない壁となること』であると考え、学生にも『自分の価値観と思想を揺るぎない形でぶつける』。ツイッターでも、学生とのコミュニケーション等を通して伝える必要性を感じた様々な事柄について、自身の経験を踏まえ、「アーティストとしての心得」や「考えるためのヒント」を発信し続けてきた。

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Drawing for “Arrow of Time (Unfinished Life)”, 2016, Gouache and pencil on paper, 395 x 545 mm

第3章「芸術と平和」には、宮島が2001年~15年に新聞等へ寄稿したテキストも収録され、「芸術と評価」「作品の名前」「ドローイングとデッサン」「作品の永続性と保存」「アーティストの未来」等の様々なテーマに対する考察、また、宮島が近年提唱している、『アーティストだけがアートの主体者ではなく、あらゆる人にアート的な感性があり表現が可能である』という概念「Art in You」(アート・イン・ユー)について、美術専門外の人にも平易かつ示唆に富んだ言葉で語られている。

また、『「戦争の反対語は平和」ではない。「戦争の反対語は芸術」である』と主張する宮島が推進し、長崎で被爆した柿の木二世を世界の子どもたちに育ててもらう事で想像力を喚起する活動「時の蘇生・柿の木プロジェクト」や、自然に寄り添う建築・環境デザインの実験「東北R計画」の取り組み、そして『文学(芸術)はアフリカの飢えた子供を救うことができるか』という、サルトルが出した命題に対して、ウガンダのエイズ孤児を対象としたプロジェクトを通して導き出した答えも本書に綴られている。

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宮島達男「芸術論」
刊行:2017年3月3日
価格:1,600円(税別)
仕様:ハードカバー(上製本)、四六判、136ページ
編集:東晋平、大森貴久(東晋平事務所)
出版社:アートダイバー
http://artdiver.moo.jp

宮島達男「LIFE (complex system)」展
会期:2017年3月3日(金)〜4月22日(土)
時間:12:00〜18:00
休廊:日・月・祝日
会場:SCAI THE BATHHOUSE
住所:東京都台東区谷中 6-1-23 柏湯跡
TEL:03-3821-1144
http://www.scaithebathhouse.com

Text: Ayumi Yakura

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