レン・ハン「ヒューマン・ラブ」展

HAPPENINGText: Victor Moreno

レン・ハンは中国において、ポスト毛沢東的なポジションに位置する新しい世代にあたる。向こう見ずで、現実の世界にうんざりした年若い彼らは、伝統に頓着しない代わりに、何がタブーなのかを理解するための新しい視点や観点を熱望していた。そして、屋外でヌードになることが中国で禁止されていることから、自身の作品が論争の的になるということにも自覚的だった。彼はこうも語っている。『ほとんどの作品で、友人をモデルに写真を撮っています。男性も、女性も。大抵ヌードですね。でも屋外で彼らのヌードを撮影する時は、たとえ自分たちが隠れていなかったとしても、とても気を付けなければいけませんでした。中国では屋外で裸になることが禁止されているからです』。

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Untitled, 2013 © Ren Hang

中国の政治情勢と国内における力学が検閲と密接にかかわっており、彼の作品は幾度となく摘発されたが、彼はそれよりも自分自身の心に従って写真を撮ることを選んだ。それは彼にとって退屈から逃れ、生きるための道を見つけるための唯一の手段だったからだ。

『私は作品で中国政府に何かを押し付けようとしているわけではなく、ただ撮っていないと退屈なだけなのです。明確なゴールや目的があるわけではないのですが…』レン・ハンはそう言って、自身の作品で政治的テーマを扱おうとしているわけではない事を、慎重に説明していた。しかし、中国政府は彼と同じように作品を捉えてはくれない。彼は中国国内での写真展を幾度となく中止に追い込まれ、逮捕されたこともあった。

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Untitled, 2016 © Ren Hang

中国の情勢がどうあれ、レン・ハンの作品は世界中のあらゆる国で展示され、有名な雑誌にも数多く掲載されており、2009年から彼は世界中を回って行う展示を続けている。成功者としてのキャリアを歩み、その写真家やアーティストとしての名が世界中に認められた彼が自殺を決意したことはとても悲しく、興味深い。フォトグラスフィカでの展示は、彼のキャリアの中でおそらく最大の展覧会のひとつだったのではないか、と企画チームは語っていた。彼らはレンの痛ましい死に、とても大きな喪失を感じていた。

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Untitled, 2016 © Ren Hang

レン・ハンが命を絶った時と、ほぼ時を同じくしてタッシェンから発売された彼の作品集「REN HANG」は、多くの場所で入手できない状態にあった。タッシェンから書籍が出る事は、多くのアーティストにとって偉業であるが、レンにとってはあまり喜ばしいことではなかったからだ。
これまでのキャリア中で最も大きな成功をいくつも経験したタイミングで、自分の命を絶つ決意を抱いたアーティストになる、ということは、とても興味深いように感じる。

レン・ハンは写真家であると同時に詩人でもあった。彼のウェブサイトでは2007年から書き溜められてきた詩や、鬱について触れたエッセイを読むことができる。多くの詩人にとって、自死というのはロマンティックな行動として捉えられている。もしかしたらレン・ハンにとっても、同様にそうだったのかもしれない。

Ren Hang “Human Love”
会期:2017年2月17日(金)〜4月2日(日)
時間:9:00〜23:00(木曜日から土曜日は深夜1時まで)
会場:Fotografiska
住所:Stadsgårdshamnen 22, 116 45 Stockholm
TEL:+46 8 50 900 500
https://fotografiska.eu

Text: Victor Moreno
Translation: Haru Murayama
Photos: Courtesy of the artist, © Ren Hang

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