カールステン・ニコライ「パララックス」展

HAPPENINGText: Aya Ono

3月18日から千葉・市原湖畔美術館で「カールステン・ニコライ:パララックス」展が開催されている。日本国内の個展としては、約15年ぶりであり最大規模となる本展では、市原湖畔美術館の独特な空間設計に合わせた、日本未発表の作品を含む6プロジェクトが展示されている。今回のタイトル「パララックス(Parallax)」は「視差(2つの異なる点から見ることで対象が異なって見える視覚効果)」を意味している。

1965年に旧東ドイツで生まれ、ベルリンを拠点に活動するカールステン・ニコライ。ドクメンタやヴェネチア・ビエンナーレの参加など、90年代から国際的に活躍。人間の知覚、音の可視化、自然現象をテーマにした作品を国際的に発表し続け、現代のアートを代表するアーティストの一人である。国内の作品では「西武渋谷店」の入り口エントランスのLEDビジョンが記憶に新しい。また、アルヴァ・ノトの名義でノイズミュージシャンとしても名高いアーティストである。

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「ユニディスプレイ」カールステン・ニコライ:Parallax展示風景 撮影:長塚秀人 提供:市原湖畔美術館

入ってすぐに私たちを迎えるのは18m長のプロジェクションスクリーン、「ユニディスプレイ」だ。スクリーン上に24種類の映像がランダムにプロジェクションされていく。錯覚や残像といった視覚効果の仕掛けが盛り沢山で、高速な動きに目が追いつかなくなり少しクラクラしたり、動いているのか停止しているのか判別できず混乱するようなシーンもある。同室内のベンチに座ってみると、立っているだけでは分からなかった不規則的な振動が身体中に伝わってくる。スクリーンの両脇に鏡があることで無限に映像が広がっているかのように感じられるため、スクリーンの中に溶けてしまいそうになる空間だ。

ショートフィルム「フューチャー・パスト・パーフェクト パート4(積雲)」は飛行機の中から撮影した雲の映像を何種類かコラージュし、アンビエントサウンドとともに再生されている作品だ。小さい画面で再生されているため、今回の展覧会の中では比較的地味に見えてしまうが、幻想的で実に美しい映像作品だ。この映像を24時間放送しているテレビチャンネルがあったとしたら、時間を気にせず何も考えずに只々眺めていたい。そんな作品である。

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「フェーズ」カールステン・ニコライ:Parallax展示風景 撮影:長塚秀人 提供:市原湖畔美術館

「フェーズ」は光の動きとグラデーションをテーマにしたビデオ作品。スクリーン上の白い光が次々に形を変えて最後には小さくなって消える。白い光がまるで生き物のようで少し不気味だ。「ユニディスプレイ」のシャープな映像とは違い、「フェーズ」はホワイトノイズと共にぼんやりと緩やかな映像が続く。
「光の動き」という科学的で難解なテーマだが、このように抽象化され映像作品になることで、私たちもようやく認識ができる。カールステン・ニコライの表現力が無限であることを痛感する作品であった。

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「パーティクル・ノイズ」カールステン・ニコライ:Parallax 展示風景 撮影:長塚秀人 提供:市原湖畔美術館

吹き抜けの空間を活かしたサウンドインスタレーション「パーティクル・ノイズ」は2つのガイガーカウンターを設置し展示室内の放射線量を計測し、放射線量を音声に変換させ、中心の柱を囲む8つのサウンドシステムから私たちの耳に届く。放射線量の検出頻度によって、音の高低と音の場所が変わる仕組みだ。聴こえてくる音も独特で後方から聴こえてきたり、真横のサウンドシステムから音が出たりと、いつのタイミングでどこから音が聴こえてくるか予測不可能で不思議な緊張感も愉しめる。

それぞれの展示室は完全個室ではないため会場全体にそれぞれの展示のサウンドが良い意味で音漏れしており、微妙に音が混ざり合っているのも心地良く、それもこの展覧会の魅力の一つだ。展示数はそれほど多くはないものの、どの作品も長時間鑑賞することに意義がある。そのうえ妙な中毒性もあり、してやられたりの「カールステン・ニコライ:パララックス」展。是非この贅沢な空間で時間を忘れてカールステン・ニコライの世界に浸ってほしい。

カールステン・ニコライ「パララックス」展
会期:2017年3月18日(土)〜5月14日(日) *4月3日(月)休館
時間:10:00~17:00(土・休前日は9:30〜19:00、日・祝日は9:30〜18:00)
会場:市原湖畔美術館
住所:千葉県市原市不入75-1
TEL:0436-98-1525
http://lsm-ichihara.jp

Text: Aya Ono
Photos: Hideto Nagatsuka

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