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丸尾結子

PEOPLEText: Seiichi Endo, Mitsuka Kimura

クレイアニメーションや撮影された写真の中で息づく造形作品の制作などクリエイティブなフィールドから、アートシーンにその活動の主軸となるステージをシフトして、ユニークな生き物的造形作品を発表し続ける丸尾結子

ふんわりとした白く柔らかいムードの独創的な作品はフレッシュな生命力、ちょっとねじれた幸せ感、可愛らしくもありきたりでない平和的な気分を漂わせる。ピュアで不思議な感覚のオリジナリティに満ちたこの作風に、これまでにない衝撃を覚える人も多く、アートファンを魅了し続けている。

今回は、2月に名古屋で開催される「ART NAGOYA 2017」での新シリーズ「PULSE」の発表に向けて、過去の作品から今、そして将来の活動について話を伺った。

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まず初めに、自己紹介と作品のご紹介をお願いします。

立体造形作品を制作しています。使う素材はいろいろですが、今は主に石粉粘土で制作をしています。自分の内側から湧いてくる感情や感覚を、白くて生命のようなものが感じられる造形作品の質感や存在感を表現することで確認をしているように思います。

今回新たに制作している作品のテーマは「PULSE」、脈拍、鼓動です。その命のリズムというかビートは私たちの内側にあるとてもパーソナルなものですが、自分の外側のいろいろなこと、たとえばそれは誰かの表情や言葉の場合もありますが、ちょっとした風とか石ころ、音楽だったりもして、そういったことに影響され、無意識のうちに変化します。たとえばドキドキしたり、すうっとしたり。命や感情のリズムを打ち続けるという意味ではそこにとどまっているのではなく、今から未来に向かう、無意識の命の意思とか変化しながら未来に向かう動的な時間の経過のイメージもあって、そんな「PULSE」が内側に充満しているような静的造形作品の表現をしてみたいと思いました。

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「PULSE」丸尾結子, 2017年, 石粉粘土、ミクスドメディア

自分が外側の何かから影響を受けて「PULSE」が反応して変化すると、今度は自分が相手に何かを発信したり何かをしたりして影響を与え返す。こうやっていろいろな人やもの、コトが影響や作用をし合いながら繋がっているのを想像すると、なんだか全てのものが繋がってひとつの大きな「命のようなもの」になっているような感覚も湧いてきます。それぞれの中にひっそり存在するはずの「PULSE」も無意識のうちに連鎖して、その大きな「命のようなもの」の中で共鳴というか共振というか、さらに複雑で、繊細で、エネルギーに溢れたアンサンブルのようなビートを奏でる。そうやって奏で続ける、みたいなイメージもあって、ホテルの一室を使った「ART NAGOYA 2017」での展示は作品たちの「PULSE」が、そして部屋に足を踏み入れた方の「PULSE」が共鳴するのも想像しながら制作を進めています。

アート界に入ったきっかけは何でしたか?

学生時代には主に立体アニメーション作品や映像作品を制作していました。卒業後は広告やプロモーション、テレビの教育番組のためのアニメーション作品などのほか、キャラクターデザイン、グラフィックデザインやイラストレーション、映像制作など様々なクリエイティブプロジェクトに参加させていただきました。

造形作品の制作という意味では、その頃は映像や写真の中に登場させる作品が多く、たとえば設定されたストーリーやその世界に登場するユニークで魅力的な立体造形を制作するという取り組みでした。こうした映像や写真の中で息づく「いきもの的立体造形」から、映像や写真を飛び出て、逆にその背景にある物語や世界観を漂わせる作品を作ってみたいと思うようになったのが2012年頃だったと思います。

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「After Gooskanpi “Goonie”」, 丸尾結子, 2013年, 石粉粘土

最初は当時、一緒にクリエイティブ活動をしていたクリエイティブディレクターの協力も得て、それまでの「ストーリーや世界観とそこに現れるいきもの」という関係を軸にしながら、その存在感を静的な立体造形にする取り組みを始めました。たとえば「After Gooskanpi」は、私の妄想世界と物語をベースにしたシリーズ作品で、2013年に、軽井沢ニューアートミュージアムで、初個展として発表させていただきました。

その後は、こうした立体造形作品の制作を主軸に制作活動に取り組んでいます。

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