ビル・ヴィオラ展

HAPPENINGText: Valérie Douniaux

ビデオ・アートだけに特化した展覧会で多くの観客を魅了するのは、そう簡単なことではない。しかし、パリのグラン・パレで開催中のビル・ヴィオラ回顧展は、その意味ですでに大成功を収めていると言っていいだろう。ビル・ヴィオラ(1951年生まれ)は、おそらく最も有名なビデオ ・アートの第一人者である。本展で紹介されるこのアメリカン人アーティストの作品(スケールの大きな作品から、より繊細な作品まで様々である。)によって、彼の経歴を幅広く見ることができる。

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Going Forth By Day (détail), 2002, « First Light » (panneau 5), installation vidéo sonore, cycle de cinq projections, 36 minutes, performeurs : Weba Garretson, John Hay, Collection Pinault, Photo Kira Perov

映像は、小さなテレビから、壁に巨大な投影をするインスタレーションに至るまで、様々な種類のスクリーンで映される。本展は、観客を心の旅へ導き、作品に自分自身で向き合えるようにレイアウトされている。作品にできる限りの強さを与えるために、全て暗闇のなかで展示され、グラン・パレの広い空間にいつもより親密な空気を与えることによって、幾分ミステリアスな雰囲気を作り出している。観客は、直感的に声をひそめ、歩みを緩め、映像に浸り切る。普段のパリの展覧会の喧噪と興奮からは程遠い静かな空間なのだ。

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Bill Viola, The Dreamers (détail), 2013, installation vidéo sonore, sept écrans plasma verticaux, quatre canaux stéréo, en continu, performeuse : Madison Corn, Collection Pinault, Photo Kira Perov

確かに、ヴィオラ展に足を踏み入れると、外の世界を忘れ、奇妙な夢に生きているような感覚に陥る。その夢は、時に穏やかで、少し不快感を与え、たまに悪夢のようでさえある。今回の展示では、時間、命、死、そして変容や精神性といったヴィオラの主要なテーマが強調されている。また、水も至る所に存在する。例えば、雨(時に逆さまに降る)、明らかに聖書を想起させる洪水、溺れた姿(ヴィオラが6歳の時に体験し、彼の人生観を変えた出来事を思い起こさせる。彼はあと少しで溺れるところだった。)である。本展の最後の作品(そして、おそらく最も強烈な作品)である「ドリーマーズ」は、カンバスのような一連の映像スクリーンに、登場人物たちが目を閉じて水中に漂う姿を映す。

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Fire Woman, 2005, projection vidéo couleurs haute définition, quatre enceintes, 11 minutes 12 secondes, performeur : Robin Bonaccorsi, Collection Pinault, Photo Kira Perov

「ドリーマーズ」が映すのはより穏やかな感情ではあるとはいえ、この映像を前にミレーの「オフィーリア」を思い浮かべない者はいないだろう。他の多くのビデオも、芸術史の代表的な作品を強く想起させる要素を持つ。ヴィオラを一流の先人の後継者として刻み込み、現代ビデオ ・アートと古くからある表現方法を結びつけているようである。「追憶の五重奏」は、ある出来事を前にした5人の表情をスローモーションで映した作品で、カラヴァジェスキによる絵画の表情豊かな人物を思い起こさせる。一方「キャサリンの部屋」が連想させるのは、もう少し控えめな、ゴシック美術や初期のルネサンス美術の雰囲気である。どちらの作品も取り上げているのは時間の概念である。前者は、極端な遅さによってそれを示す。後者は、一人の女性(または、聖カタリナ)の一日のある時点を5つの小さなスクリーンがそれぞれ映し、後ろの窓がまた異なる無常さと季節の経過を示している。

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Catherine’s Room (détail), 2001, polyptique vidéo couleurs sur cinq écrans plats LCD, 18 minutes, performeuse : Weba Garretson, Bill Viola Studio, Long Beach, Etats-Unis
Photo Kira Perov

しかし、本展は、歴史的、宗教的な知識と関連づけなくても、多くの観客にとって非常に魅力的なものである。映像は彼ら自身を象徴し、感動的で、まるで催眠術のようであり、常に驚きを含んでいる。このような展覧会は、感覚の経験と言える。ただ目で見るだけでなく、しっかりと感じ浸ることのできる、類稀な興味深い回顧展である。そしておそらく、より多くの観客がビデオ ・アートを身近に感じることのできるこれ以上ない機会であろう。

Bill Viola
会期:2004年3月5日~7月21日
時間:10:00~22:00(日曜、月曜20:00まで、火曜定休)
会場:Galeries Nationales du Grand Palais, Paris
住所:3, avenue du Général Eisenhower 75008 Paris
TEL:+33 1 44 13 17 17
http://www.grandpalais.fr

Text: Valérie Douniaux
Translation: Satoko Shimokawabe

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