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タイガー・トランスレート・オークランド 2012

HAPPENINGText: Hiromi Nomoto

夜9時から始まったタイガー・トランスレートには、ニュージーランドのミュージシャン、ホーム・ブルー・クルーウィールド・トゥギャザーダドリー・ベンソンダーク・ウェスティーズ・ボーガン・サーカスケーアース・イン・ザ・CBD、ザ・アーク、そしてゲストのヨシ・ホリカワが出場した。

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ダドリー・ベンソン Photo: Tiger Translate

最初に登場したのは、今回のようなイベントに出演するのが初めてというダドリー・ベンソンだ。観客たちは彼の演奏と声に夢中になった。ダドリーに感想を聞いたところ、『フェスティバル・イベントは初めてで、観客がどう考えているなんて推測するのは難しい。いつもは自分でツアーをするんだ。自分で全て決める監督的なプロセスはとても疲れる。でもこの方法が好きなのさ。私にとってタイガー・トランスレートで演奏するということは、アルファーの勢いを放つことなんだ。』と言う。

ダドリーの作品にはマオリ語(ニュージーランド原住民の言葉)を使ったものがある。ヒリニ・メルボルンの曲「キウイ」をアレンジしたヴァージョンでは、マオリの“喪失”を表現している。悲しげな歌声は、飛べなくなった鳥キウイ、つまり言語・アイデンティティー・自己決定権を喪失したマオリを意味している。彼の人気は地元ニュージーランドだけではない。2012年には日本でアルバムをリリースしており、タイガー・トランスレートの後は、日本でのツアーとアーティストインレジデンスを控えていたことについて、『日本の伝統的な音楽楽器に興味があり、琴や三味線、太鼓の奏者に会って学んでみたい』と答えてくれた。

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左からウィーアード・トゥギャザーのニック・D、アーティストのトム・グールド、サウンドデザイナーのヨシ・ホリカワ Photo: Tiger Translate

ヨシ・ホリカワの音楽に観客は、少々戸惑った。なぜなら、それが音楽らしい音楽ではないからだろう。ヨシは私たちの身近にある音を録音して作品をつくる日本人サウンドデザイナーだ。アジアからのアーティストとしてニュージーランドに招待された。わずか6日間(実際に作業できた日数は更に少ない)という短い滞在期間で作品を一つ仕上げた。その作品にニュージーランドのアーティストであるトム・グールドが影像をつけた。

オークランドの自然の中で行われたヨシの録音には、グールドと影像カメラマン、それからニック・D、タイガー・トランスレート関係者らが同行し撮影した。実際の彼ら2人の制作ではまず、ヨシが音楽をつくり、その後トムが影像をつくった。それをまた、2人で一緒に意見を出し合いながら、音楽と影像を組み合わせていった。『ヨシとのコラボレーションはとてもエキサイティングだった。彼の音楽は日常の雑音から音楽がつくられている。彼とコラボレーションできるなんて、とても面白いだろうと思った』とトム。

ヨシは「Bubbles」や「Skipping」、ニュージーランドで制作した最新の曲「Aotearoa」(ニュージーランドの別名で、マオリ語で「白く長い雲がたなびく地」の意味)を披露した。広報のプレマは、仕事中なの、と言いながらも、楽しそうにリズムに乗っていた。ステージの上ではトムのつくった映像が映し出された。トムの非常にゆったりとした映像はまるで、現代の私たちが感じているような時間ではなく、オークランドの自然の中の木々や風・水・生き物の中を流れている時間を表現しているようだった。

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ウィーアード・トゥギャザー Photo: Tiger Translate

「ウィーアード・トゥギャザー」は、ディック・ジョンソンとニック・Dによる新しいスタジオとライブプロジェクトだ。レッドブルスタジオのカリビアン・スチールパン・オーケストラズ、ブルンジ・ドラム・アンサンブル、スーダンのヴォーカリスト、ガーナのパーカッション、太平洋の合唱団、フレンチ・メキシカン・アコーディオン・プレーヤー、レッドブル・ミュージック・アカデミー(レッドブル主催で毎年世界のどこかの都市で開かれている。参加ミュージシャンたちはコラボレーションなど特別なプログラムが与えられ、一定期間その都市に滞在し曲を制作する。)に参加したミュージシャンなどからなる。

世界のエキゾチックな音楽とクレイジーな音に対するニックの想いが拍車をかけ、ディックが更にダンスしたくなるようなグルーブに仕上げた。彼らの登場で、陽気な音楽に、会場は大きく盛り上がった。出演している彼らが会場で一番楽しそうだった。ニックの音楽への愛情は疑いようもない。DJをしている以外にも、オークランドでラジオ番組を持ちテレビ番組にも出演し音楽情報などを発信している。毎朝ラジオの出演があるはずなのに、蛇行した険しい山道の移動も全く気にせず、パソコンや携帯を操作しながら、ヨシの録音に同行しドキュメンタリー映像を制作した。そしてヨシをニュージーランドへと誘ったのは、このニックであることを忘れてはならない。彼がレッドブル・ミュージック・アカデミーでヨシに声をかけたのだ。それから1年、オークランドでヨシのプロジェクトが実現した。「俺は約束を守る男だ。」とニック。

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