パリ・ファッション・ウィーク SS 2012

HAPPENINGText: Shotaro Okada

先に述べた、色のコントラストや、前向きな衣服の有り様は、リミ・フウのコレクションで大いに感じることができた。
冒頭では、「世界の天才的な医者たちよ立ち上がれ!日本の子供たちはあなたたちの助けを必要としている」と書かれたフラッグを持ってモデルが登場。以降、ロカビリー調の音楽に合わせ、モデル達は軽快にランウェイを歩いてゆく。

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リミ・フウ 2012春夏コレクション

ショーはまるで、ロカビリーファッションとクチュールがデザイナーの頭の中で、勢いよく潔く交わっている様であり、色は白と黒、赤と黒、青と白とツートーンで刺激的。途中で現れたゴールドのサテンのドレスが、全体にスパイスを効かせていた。

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アンドレア・クルーズ 2012春夏コレクション

勢いとポジティブなエネルギーは、ファッションにはとても大切!その思いは、アンドレア・クルーズのプレゼンテーションでも再確認することができた。このブランドが行なったギャラリー内での即興的なプレゼンテーションは、その場のヴァイブがダイレクトに現れたもの。10月1日に訪れたカクテル・パーティは、ギャラリーはクラブに変わり、路上には大勢の人が溜まり、各々喋ることが止まらない、まさにパリジャン(ヌ)の夜であった。そして、地下のスペースでは撮影会が行われ、今シーズンのルックを纏ったモデルが人形のようにくり抜かれ、雰囲気任せの撮影会を実施。その仕方は自然体でクール。パリには貴重な、ストリートの感性を持ったブランドである。

agnesb.JPGダミール・ドーマ2012春夏コレクションでのフィナーレ
アニエスベー 2012春夏コレクション

そして、ポジティブなエネルギーを、ファッションを通していつも伝えてくれるアニエスベー。今回のショーは、セーヌ川沿いの船の中で行われた。
ショーはイタリアへの旅をイメージしたもので、「空港、イタリアへの旅」、「ピエロ・デラ・フランチェスカ」、「リヴィエラの空気」、「アニエスの“写真”ドレス」、「(21世紀の)夜の結婚式」というテーマに分けて紹介された。そのどれもが微笑ましく、思わずスキップしてイタリア旅行に出掛けたくなってしまうものばかり。色はカラフルでありながらも、ここのブランドらしく、落着いたトーンに仕上がっている。アニエス自身の旅の思い出が、そのまま衣服として実を結んだかのような、とてもリラックスした自然体のショーであった。

3部にわたるパリ・ファッション・ウィークSS12のレポートも、これにて終了。僕のレポートは、決して流行を分析する類いのものではないと思う。自分が感じる全体に漂う空気のようなものを、言葉にして並べてみた次第である。

パリのモードは、今後どのような表情を僕たちに見せてくれるのだろうか。
リアリティのある服が多くなり、大掛かりなショーは減ったと言われるが、僕はこの状況を、衣服と人の関係を考えるにはとても良い機会であると考える。
華々しさを誇るということは、パリコレクションの大事な側面であるとは思う(もしかしたら、この華々しさは、会場でのストリートスナップに代わってしまったのかもしれない)。しかし、デザイナーの哲学や手仕事がきちんと伝わるということほど、この未来を考える上で最も大切なところなのではないだろうか。パリ・ファッション・ウィークSS12では、それを、何人かのデザイナーが身を以て、見る側にきちんと示してくれたシーズンであったと思う。

パリ・ファッション・ウィーク SS 2012
会期:2011年9月27日(火)〜10月5日(水)
会場:パリ市内各所
https://www.modeaparis.com

Text: Shotaro Okada
Photos: Shotaro Okada

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