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パリ・ファッション・ウィーク SS 2012

HAPPENINGText: Shotaro Okada

第3部「清らかさや前向きさが現れた衣服」

ファッションを身に纏うということは、人をセクシーに見せたり、時には本来の自分とは違うものに変えたりする。ファッションはウソをつくことだってある。
僕が思うに、作り手が自らの信念に基づいて誠実にもの作りを行なっていれば、受け取る側もウソや歪みのない着方ができるのではないだろうか。第3部では、この誠実さから生まれる清らかさや、着る側が前向きになれる衣服について話したい。

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イッセイ・ミヤケ 2012春夏コレクション

今シーズンから、デザイナーが宮前義之に代わったイッセイ・ミヤケ。酷暑のなか、うちわが配られる心遣いに感謝し、ショー前の揺れるような音楽に身を任せていると、会場は青く染まりショーはスタートした。
テーマは「Bloom Skin」。花の開花するさまを、衣服に美しく落とし込んでいた。シルエットは流線を描き、着る人の背後から優しく包み込む。素材はとても作り込まれたものが多く、ゆるやかで美しいシルエットのコートが、実はポリエステルだったことを知った際には、大いに驚いた。タッチが繊細でありながらも、芯の強さを感じるのは、花の在り方と一緒なのだろうか。写真のようにグラフィカルなものも現れ、それらは植物の内部のかたちや、生命力を象徴しているかのようであった。各々のモデルが歩いた後も、色やシルエットが余韻で残り、お互いに滲んでいく…。プレスリリースには「着るひとをそっと元気づけ、内面の豊かさをひきだす」と書いてあったように、優しく前向きな気持ちになれるショーであった。

また、アレクシ・マビーユのショーは、会場席に小さな花束が添えられ、モデルの髪にはデイジーの花が散りばめられ、フローラルで明るい雰囲気を醸していた。プレッピーなストライプのシャツドレスで幕を開け、途中から、艶やかな花柄の衣服、フリンジやスパンコールで捻ったドレスが登場。彼のアイコンといえるリボンも多く見かけられ、パンツの裾や胸元、バッグに用いることによって、ユニークで可愛らしい印象を与えていた。

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ギャスパー・ユルケヴィッチ 2012春夏コレクション

そして、ギャスパー・ユルケヴィッチのショーでは、ロマンティックな要素をデイリーウェアに上手く合わせていた。テーマは「カウンターポイント」。カウンターポイント(対位法)とは、2つのまったく対照的なものごとを組み合わせて構成する方法。このテーマのためか、色やシルエットは、コントラストに富んだアイテムが多く見られた。例えば、ワンピースに用いるような広がりのあるショートスリーブを、スポーティなコートに合わせ女性らしくしたり、写真のように色の映えるワッフルの襟をアクセントとして用いてみたり。シルエットは横に軽やかに広がり、肩から腕にかけて柔らかいドレープを描くなど、優しくケアを。また、フロントをボタンで留めたスカートは、全体に微妙なミュアンスを生み、とても愛らしい。ものごとをひとつだけに捉えず、異なった見方を足してゆく在り方に、作り手の清らかさを感じた。

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