ベンジャミン・グロッサー

PEOPLEText: Memi Mizukami

あなたの作る音楽は「とても騒々しく不快」だと聞きましたが、あなたはどう思いますか? 音楽制作についてどうお考えですか?

それは「優位の適所(Epistatic Niche)」と題した、トランペットとピアノとパーカションと電子音で作った私の曲に対する、ある新聞のレビューからの引用ですね(興味があれば、私の曲は全て無料でダウンロードできますので是非聴いてください)。私はその意見が大好きです。確かに私の音楽は不調和の音調を使いますし、楽器でもコンピュータでも大抵大音量で騒々しく演奏するスタイルです。私にとってはこの音楽は美しいのですが、不快と感じる人もいるでしょう。それは構いません。ただ、より多くの人が私の音楽や、似たスタイルの作品を聞けば聞くほど、人々は私に共感し始めると思います。仮にそうならなくても、それもまた良いでしょう。

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インタラクティブアートの制作と音楽の制作はどう違いますか?

インタラクティブアートとは、鑑賞者と作品との間の相互交換のプロセスです。作品は鑑賞者と相互交換できるような、あるオプションを提示し、鑑賞者は作品に何らかのアクションを行います。作品はそれに対するリアクションをあらかじめ提供された入力装置に入力し、鑑賞者とやりとりをするのです。このフィードバックの循環が、鑑賞者の体験を構築するベースになります。そして願わくば作品を理解する手がかりとなるのです。音楽も、フィードバックの循環の一面を持ってはいますが、それ以上に、あらかじめ組み立てられた時間軸上で具体的な演奏体験を共有するものです。表現と時間的尺度についてのこの違いは、制作課程にも違いをもたらします。インタラクティブアートを作るには、このフィードバックの循環を繰り返し改良しなければなりません。一方音楽は、物語の(あるいは反物語の)始めから終わりまでを創造するものです。

尊敬する人は誰ですか?理由も教えて下さい。

私は多くのアーティストや作曲家にインスパイアされています。ヤニス・クセキナスの、コンピュータと音楽を融合させた先駆的作品は私がこれまで聞いた音楽で最も「不快な」(私にすれば「美しい」)ものでした。私が幸運にも師事することができた2人の作曲家、サルヴァトーレ・マルチラノとザック・ブラウニングは20世紀後半から21世紀でもっとも重要な作品を作った作曲家だと思います。視覚芸術では、ビル・ヴィオラの作品が好きです。ビデオアーティストである彼の作品は、私に時間について新しい方法で考えさせてくれます。他にはラファエル・ロサノ=ヘメル、カミーユ・アッターバック、ダン・グラハム、ロクシー・ペイン、ジョアン・ミッチェルが様々なやり方で刺激を与えてくれました。

休日には何をしてリラックスしますか?

インターネットでテクノロジーやプログラミングについての文献を読んだり、競争の激しいリアリティ番組を観たり、ビデオゲームをしたり、音楽を聴いたり、友達と会ったりします。アーティストで良かったこと、これはあるいは難点でもあるでしょうが、それは私が常に作品のことを考えているということです。考え、作ることはとても楽しいからです。だから休日の間も沢山考え、沢山作っています。

あなたにとってテクノロジーとは何ですか?テクノロジーに対するあなたのご意見をお聞かせください。また、以前はどのように考えていましたか?テクノロジーは、あなたにとってどんな意味を持つものですか?

私たちが絶えず新しいテクノロジーを創造し続ける理由のひとつは、人間という生物の特徴をはっきりさせるためです。車輪から井戸に至るまで、また飛行機からトランジスタに至るまで、新しいテクノロジーはみな、新しいアイディアと新しい可能性をもたらします。しかしまたそのどれもが、知られざる副作用を持っています。私が興味を持っているのはそのことなのです。私が最も好きな言葉のひとつに、アメリカのメディア理論家、マーシャル・マクルーハンのものがあります。「我々は道具を作る。その後、道具が我々を作る」テクノロジーの進化は、私たちがその課程を完全に理解するよりも断然早く、その進化の早さは私たちの生命や、生き方を変えていきます。そのことに私は大きな魅力を感じます。しかし同時に他のいろいろな疑問についても考えることはやめられません。

その素晴らしい頭脳で、将来は何をやりますか?

現在は、ソーシャル・ネットワークの様々な側面を研究するインタラクティブアート作品のシリーズに取り組んでいます。ソーシャルネットワークはいかにして人々を均質化し、個々の表現を制限し、人どうしの関わり方を変えるのか。それをネットワークの内側と外側から研究します。

ありがとうございました。あなたの作品に日本で会えることを楽しみにしています。

どういたしまして、インタビューをしてくれてありがとう。2005年に、第2回国際ユニヴァーサルデザイン会議に出席するために日本を訪れました。(はじめは京都に、その後東京に滞在しました。)この旅で私は日本の人々、文化、食べ物が大好きになりました。また行きたいです。私の作品が日本で展示されればとても光栄です。いつかその機会が得られることを楽しみにしています。

Text: Memi Mizukami
Translation: Shiori Saito

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