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タラ・ドノヴァン「 無題(マイラー)」

HAPPENINGText: Carlos J. Gomez

私自身がタラ・ドノヴァンの作品に心酔していることをまず認めなくてはならない。単純に、ニューヨークに住み始めたこの10年で鑑賞した中でベストの作品である。

タラ・ドノヴァン: 無題(マイラー)

今でも鮮やかに思い起こすのは2002年に訪れた空間。床には珊瑚礁の群生地を思わす削り取った無数の鉛筆が敷き詰められ、壁はまるで巨大に膨らんだ雲の様相で、近付いてみると幾千ものストローの切れ端が糊付してあった。両作品ともに今は無き、この街のお気に入りのギャラリーの一つでもあったトライベッカのハドソン通り沿いのエース・ギャラリーに展示されていた。

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タラ・ドノヴァンは、日常のありふれたモノをユニークな視点から捉えて作品に応用していく。時にそれはほのかであり、それと同時に力強くも感じられる。そしてそれは自分自身の少年時代や、幼少期に感じた大自然の魅力に圧倒された記憶を思い起こさせるのだ。

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彼女の最新作「無題(マイラー)」は彼女の初期の作品同様の衝撃を与えてくれる。マイラーのシートを用いて繰り返し互いを織り込みながら、構造的な球形のパターンを作り上げ、変容する微生物の様な広がりを見せる。しかし、それは巨大な3次元の作品なのである。この新しい彫刻作品では初期群からの技術を昇華させ、表層からさらに圧倒的な膨張を遂げ、正確には高さ11フィートにも達する。恐らく現在では、彼女生来の美学に加えて工学的な側面をもマスターしているのであろう。

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マイラー、この典型的なドノヴァンスタイルには複数の異なる視点から鑑賞される意図が含まれている。遠く離れた位置から彫刻としての全体像を掴み、近づきながらその細部からアートや自然、フラクタル計算の間を行き来する素材感を堪能する。この世の中がそうであるように、童心に帰って眺めたときに初めて感じる美しいものを見つけることができるだろう。

タラ・ドノヴァン「無題(マイラー)」
会期:2011年3月4日〜4月9日
会場:ペース・ギャラリー
住所:545 West 22nd St, New York
http://www.thepacegallery.com

Text: Carlos J. Gomez
Translation: Yoshitaka Futakawa

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