クリスチャン・ボルタンスキー「NO MAN’S LAND」

HAPPENINGText: Carlos J. Gómez de Llarena from Med44

今こそ生後3ヶ月の息子に、初めて巨大なアートインスタレーションを体験させる絶好のチャンスだ、と私は決意した。その機会とはクリスチャン・ボルタンスキーの「No Man’s Land」。30トンもの古びた衣服がパーク・アベニュー・アーモリーの巨大な稽古場を埋め尽くすインスタレーションだ。

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ホールに入っていくと最初に目につくのが、錆び付いたビスケットボックスの数々からなる重々しい壁。これよって壁の向こう側へのアクセスが複雑になっている。そして次に耳をつんざくような心臓の鼓動音が空間を取り囲み、メインホール内部へと誘う。床の上の洋服を囲む杭には拡声器が取り付けられ、そこからそれぞれ異なった心臓音が繰り返し発せられている。折り重なる心臓音は心を落ち着かせるとともに、単調さをやわらげる。幼い息子は、すやすやと眠りはじめ、私はリラックスしてこの旅を楽しむことにした。

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壁の通路を抜け出ると、メインホール内の空間は、まるで夢の中。もしかして私も眠りに落ちたのか?想像してみてほしい、ツェッペリン型飛行船やDC-10ジェット旅客機が入るほどの巨大なホールに、碁盤の目状に着古された洋服が並び、床を埋め尽くしている光景を。その整合的なフォーメーションは多分にニューヨークの市街図を思わせ、衣類のブロックはストリートによって区分けされている。ホールの中央には15メートルにまで積み上げられた服の塊が、現場をより不気味な光景に仕立て上げている。

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回廊を歩きながら、床に残されたいくつものパンツやシャツ、セーター、スカートのまわりを彷徨っていると、かつてそれらを着ていた人々のことを思わずにはいられない。まるでたった今、携挙が起こり、服の持ち主の体がどこか遠い無人地帯へ消えていってしまったようだ。

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衣服の山の脇には巨大なクレーンがとまっており、午後5時30分になると動きだして山の頂上から数着の洋服をつかみ上げ、天井高くまで持ち上げ、また落とす。まるでサラダを和えているかのような光景だ。ボルタンスキーはこのインスタレーションを通して、夢をみるのと同じように、私たちにとりとめなく物事を思考する機会を与えてくれる。

Christian Boltanski – No Man’s Land
会期:2010年5月14日〜6月13日
開館時間:12:00〜19:30(木曜日 14:00〜21:30)
休館日:月曜日(祝日は開館)
会場:Park Avenue Armory
住所:643 Park Avenue, New York, NY 10065
TEL:(212) 616-3930
http://www.armoryonpark.org

Text: Carlos J. Gómez de Llarena from Med44
Translation: Saori Hashiguchi

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