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一原有徳展「多面体 地球の部品掌の中にあり」

HAPPENINGText: Mariko Takei

モノタイプでは、最初期の微生物を思わせるフォルムを拡大して見たような表現から、次第に宇宙空間に広がる混沌とした未来都市や惑星を思わせるような表現へと推移している。作品タイトルも、当初は《具》や《変身》(共に1958-1959年)と、視覚化、具体化しやすいものから、次第に《RON 15》(1975年)、《LEN》(1978年)など、英数字の組み合わせによる意味をなさない記号的なものが多くなっている。

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「一原有徳・多面体 地球の部品掌の中にあり」展 会場風景 / 北海道立近代美術館

モノタイプ以外にも、アルミニウム版に麦や米などの穀物や金網、糸など様々な素材をプレスしたり、水酸化ナトリウムなどの薬品を垂らすなどして腐食させ、プレス機を使って刷る金属凹版にも多く取り組んでいる。また、金属に焼跡を残す熱版など、新しい技法にも積極的に挑戦してきた。表現しあらわれるものだけでなく、表現手法においても、「未知なるもの」に対する一原氏の興味を伺うことができる。

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「一原有徳・多面体 地球の部品掌の中にあり」展 会場風景 / 北海道立近代美術館

展示作品の中でもひと際目をひいたのが大型の版画作品の展示だ。何枚も継ぎ合わせた版画と円筒形の柱に張り合わせた版画を組み合わせた《SON・ZON》(1960-1979年)、48枚の大版とステンレス板を焼き付けた作品を組み合わせた大作《HMMA》(2001年)など、ダイナミックなインスタレーションを展開している。大型の版画作品について、北海道立近代美術館の主任学芸員で、「一原有徳 ー 版の冒険」(ミュージアム新書)の著者でもある、光岡幸治氏は『従来ある版画の概念を拡大させた意欲作です』と言う。

一原氏の表現する宇宙的ダイナミズム感は、版画と共に展示された俳句作品にも同様に表現されている。

「バミリヨン、レモンイエローの底のブラック温泉に」(1939)
「蝸牛に敷かれて青き地球見る」(1969)
「9999 999 ヒラケゴマ」(1976)

今回の展覧会で展示された版画は約40点。小樽出身の一原氏の作品は、小樽市内に屋外モニュメントが設置されている他、札幌ドーム・アートグローブなどにも作品が設置されている。2011年4月には市立小樽美術館に「一原有徳常設展示室」が開設され、同館の所蔵作品が常設展示される予定だ。

一原有徳・多面体 地球の部品掌の中にあり
会期:2010年4月17日〜6月20日
会場:北海道立近代美術館
住所:札幌市中央区北1条西17丁目
TEL:011-644-6881
https://www.aurora-net.or.jp/art/dokinbi

Text: Mariko Takei

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