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鈴木ヒラク初作品集「GENGA」

THINGSText: Mariko Takei

「GENGA 」シリーズのドローイングは、全てコピー用紙にマーカーによる作品ですが、何か一貫したテーマに基づいて描いているのでしょうか?または、それぞれの作品にテーマを設定して描いてるのでしょうか?コピー用紙とマーカーという使用材料以外に「GENGA」シリーズのドローイングに共通点などあれば教えて下さい。

「GENGA」はA4のコピー用紙を真ん中で二つに折って、そこに普通のマーカーで描いています。描かれた図像が1000枚ともぜんぜん違うのは、一枚一枚が自分にとって新しい文字やシグナルのようなものだからで、つまり全部が発見そのものの集積だからです。

例えば、目の前を歩いている人が突然横を向いて洋服の背の柄が歪んだ一瞬とか、電車の窓から遠くに見えた建物の残像とか、意味不明な看板やグラフィティなんかを見てハッとした瞬間をヒントとして、それを家で思い出して描こうとするじゃないですか。
そうすると描くという行為の中で記憶がズレていって、描いた絵自体に発見の感覚を得られたら「GENGA」に入れるという感じです。
似たような図像は入れていません。「牡蠣」と「柿」とか、そういうような似方はあると思いますが。

genga360.jpg
GENGA #360 / マーカー、コピー用紙 / 210 x 297 mm / copyright © Hiraku Suzuki

本来はコピー用紙はプリンターで文字をプリントするものですが、そこにマーカーで点や線を書いたものをスキャンして「データ化」したときに、本当の意味で記号になったというか、新しい世界の文字を作ってしまったような、やってはいけないことをやってしまったような快感を感じました。

「GENGA」を制作するということは、自分にとっては絵を描くというより、勝手に新しい言語で話してみたり、勝手に新しい星座を発見するような行為に近いです。
逆に言うと、かつて旧石器人が原始の文字を石に刻んだり、遠い未来に誰かが別の惑星でゼロから文明をつくり出すような行為を再現しているのかもしれないです。

それぞれのドローイング作品はどのくらいの時間をかけて描きますか?作品により制作時間の差はありますか?

それは一枚一枚違います。10秒で描いたものもあるし、2ヶ月かかったものもあります。
毎日沢山絵を描きますが、「GENGA」に入れるのはごくわずかです。「GENGA 2」も出したいですが、20年後くらいになるかもしれないですね。

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