
芸術分野の境界がぼやけ始めている。だから、未来は明るいのだ!
デザインや特にアートのその意味や解釈は、人によって様々ゆえに限定するのは難しい。おそらく、判断するのに重要なことは、単純に作品そのものが持っている性質だろう。ストックホルムを拠点に活躍するヴァール(VÅR)は、技術やスタイルのある個性的な表現を広く展開している。ファッションレーベルの「チープマンデー」や「アムネスティ・インターナショナル」のキャンペーンを手がけている、カールとビョルンの作品に馴染みのある人も多いはず。
神聖なものから死をテーマにしたものまで不思議な世界を作り出すヴァールの作品は、力強く、繊細なイラストや、タイポグラフィーへの愛やその実験をベースに制作される。これが、魂のこもった作品を可能にし、きれいな模様の花を咲かせている。ヴァール(Vår)とは、スウェーデン語で「春」と「私たちのもの」を意味している。その名前の由来は『1996年の凍えるように寒い春に、エキシビションやクラブイベントを主催したことがきっかけで、それを自分達のチーム名として使うことに決めた』と彼らは語っている。
でも名前には、春ということだけでなく、「僕たちー僕たちのもの」という意味も込めている。ヴァールには様々な顔がある。そんな様々な顔を持つ彼らは一体どんな人たちなのだろうか?
ヴァールがスタートした経緯を教えてください。また、何人のメンバーが関わっていますか?
ヴァールは、カール(Karl Grandin)とビョルン(Björn Atldax)の2人組です。まだ美術学校で他のデザイナーのアシスタントをしていた1996年から実験的なコラボレーションを始め、その時から様々なプロジェクトを一緒に手掛けています。2004年には、数人の友人も一緒にファッションレーベルの「チープマンデー」をスタートし、4年間ブランド全体のグラフィックを担当しました。現在は、ストックホルムの北側にあるスタジオをシェアし、商業的な仕事から個人的なプロジェクトまでそこで制作をしています。
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ご自身の意見として、北欧の視覚コミュニケーションをどう思いますか?
それは、良くも悪くも言えることが幅広くありますね。面白いコミュニケーションもあるし、そうでないのもある。スウェーデンの多くの“コミュニケーション”と言えば、残念ながら、でも明らかに、広告です。スウェーデンには何人か面白いクリエイターがいますが、ほとんどのデザイナーやアーティストは、生活を支えるために商業的な仕事に頼っているのが現状です。そのことから、デザイン学校では、学生に何か新しいことを試させたりするよりは、市場により近いところに関わることを教えているようですね。でも、様々な芸術分野の境界を縁取る輪郭は、ぼやけ始めている。だから、未来は明るいですね!数年に渡り、僕たちは時に一緒に、時に別々に行動しながら、東京、ニューヨーク、アムステルダムと、数都市で生活や仕事を経験してきました。ストックホルムは、現在の僕たちにはとても素敵な場所ですが、多かれ少なかれこの場所とは無関係な仕事をしてると思います。
ヴァールの作品は、主にイラストやグラフィックデザインが多いかと思います。自分の手掛けている仕事内容をご自身の言葉で説明してもらえますか?
幅広い様々なメディアの作品を手掛けることは、自分たちにとって自然なことです。ある種類の仕事から、次に手掛ける仕事が全くことなる分野に変わってもそれを楽しめるけど、僕たちのやっていることに、こうだとラベルを貼るのは難しいですね。現在は、密造焼酎を作ったり、ピザ屋さんを開こうかと予定しています。
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印刷やデジタルなプラットフォーム作品を作る上で、特別に考えているものはありますか?
立体なものを手掛けるのが楽しいですね。なので、デジタルなものより、本、ポスター、インスタレーション、服などをよく制作しています。
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60年代後半以降のグラフィックデザインやイラストレーションは、独学から学校で学ぶというスタイルへと成長しました。最近では、大学で学位も取ることができます。現在、この道に進もうとしている人達へのアドバイスをお願いします。
皆学生はそれぞれ異なるので、完璧な学校など存在しません。でも良い学校では、経験したり、新しいことを試したり、物事をひっくり返したり、ぶっ飛ばしたり、完全に失敗しても、それをやり過ごしたり、その経験から学んだり、たくさんの機会があるでしょうね。やみくもに従来のやり方に従うより、自分の方針や、やり方を見つけることが、本当の意味で革新的な作品を作ることができる唯一の方法だと思います。
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特に注目している学校はありますか?
特にありません。学校にはそれぞれの方向性や善し悪しがあります。でも、ここ数ヶ月の間に、コンストファックというストックホルムのアートスクールに通う学生が作った作品について、とても興味深く、錯綜した話し合いが行われたんです。話し合いの内容は、表現の自由と、芸術の規制についてで、その話合いはそんなに注目されなかったけれど、多くの市民を魅了していました。多くの人が実は芸術作品について、芸術の定義について、アートスクールの学生の作品について、気に掛けているのがわかって面白かったです。
広告業界は賞を受賞するということに少しとらわれ過ぎているように思います。金獅子賞、ペンシル、プラチナ賞などが競争のシナリオを支配している。グラフィックデザインやビジュアルアートがもっとのんびりする時はくると思いますか?
殆どのデザインアワードが、非常にビジネスに関連したもののようだし、何かを売るためのただのもう1つの方法でしかないと思います。その世界とはあまり強いつながりを感じないので、あまりわからないですね。
これまで受賞した中で何か一番印象に残っていますか?
何年か前に受賞したトラナン・プライズ。ストックホルムのバーが毎年最も影響のあるお客さんに与える賞なのですが、とても素敵でした。
それは最高ですね(笑)。ご自身の目から見て、面白いフェスティバルなどはありますか?
スウェーデンでは、賞などは主に広告代理店の範疇だったりします。僕たちは、競争したり、遊んだり、受賞するのも良いとは思いますが、そういう類いのことには本当に疎いんです。
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手掛ける作品は、音楽やファッション業界に関するものが多いですね。活躍する初期の頃からどのようにやってこられてますか?
一緒に活動を始めた当初は、クラブイベントを手掛けたり、DJしたり、ビールを売ったり、ストックホルムの音楽シーンでアクティブに活動していました。なので、ポスターやフライヤーのデザインを手掛けるのは当然と言えることでしたね。自分たちや友人のプロジェクトのアートワークを手掛けることによって、徹底してヴァールが何であるかを定義する作品の主要な部分を磨いてきました。最近のプロジェクトには、ノルウェーで開催されるHoveフェスティバルのポスターや、少し風変わりなレコードレーベル「Du & Jag」のデザインなどがあります。
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他に好きなクライアントは?
大体、僕たちは、クライアントの為に仕事をするというよりは、クライアントと一緒に仕事を楽しんでいます。毎年、リッシュというバーで夏に開催されるイベントのポスターをデザインしています。リッシュは僕たちのお気に入りのストックホルムにあるレストランです。その場所自体が刺激的で、そこのスタッフとも仲良しです。彼らは僕たちに全てを任せてくれます。作るのは40部という少ロットなので、フォーマットや、素材、印刷テクニックなど、いろいろと実験しています。
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インテリアデザインに関して、ヴァールの最近のアイデアは何ですか?
最近は、緑と赤のレンズの紙製メガネを1万個制作しました。そこで、パーティを開催しようと計画中で、会場の表面を完全に3Dイメージを印刷したもので覆って、新しい層の世界を作ろうと思ってます。

楽しそうですね。アートインスタレーションやアートクラフトなどは、ヴァールにとって興味深いものですか?
僕たちは、定義を拒むアートや、グラフィックデザイン、イラストレーション、ペインティング、ファッション、応用美術、インスタレーションと呼んでいたものの中間にあるものや、それを越えるようなものに興味があります。
プロジェクトで関わりのある他のスタジオやアーティストとのコラボレーションを教えて下さい。
現在、僕(カール)は、オランダのアーティスト、アンド・ビヨンドとコラボレーションを予定しています。「If You Could Collaborate(もしコラボレートできたら)」というショーをイーストロンドンにある「ア・ファウンデーション・ギャラリー」で2010年1月14日より開催する予定です。
ストックホルムでの暮らしはどんなところが楽しいですか?
ここは僕たちの地元です。ここに居るのと同じくらい、ここを去るのもいいなと思います。
最近のプロジェクトはどんな感じですか?
最近はチープマンデーが初のアイウエアのコレクション「クレアボヤント」を発表し、アートディレクションを手掛けています。また、ロンドンでヴァールの展覧会を開催します。
Vår
Woo Agentur AB, Hökens gata 8, 116 46 Stockholm, Sweden
TEL:+46 (0)8 6402305
http://www.vaar.se
Text: Victor Moreno
Translation: Mariko Takei