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第53回ヴェネツィア・ビエンナーレ

ビエンナーレの秋の気配。

夏が過ぎ去ったヴェネツィアの祭典に残されたものは何か?

53rd Venice Biennale53rd Venice Biennale

この地球上で最も素晴らしいアートの祭典のひとつであるヴェネツィア・ビエンナーレ。残念ながら私はその重要なイベントのオープニングを逃し、9月のはじめになるまでヴェネツィアを訪れることができずにいた。ニューヨークとロンドンでのファッションの仕事を辞退した私は、せめて遅ればせながらでもこの美術の祭典に触れるため、美しき街ヴェネツィアへと向かった。世界で最も美しい街のひとつであるここでは、ジャルディーニ広場の外にひっそりと立つパビリオンを探すうちに、入り組んだカーレ(小道)、ソットポルテゴ(建物の下を通る通路)、ラモ(枝道)のせいで100%迷子になってしまう。開催から1ヶ月を過ぎた会場で、私はビエンナーレに残されたものを求めて、華やかに飛び回る国際的なアート界のエリートたちの陰で、ひたすら歩き回った。

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ビエンナーレのオープニングから参加しないことにはメリットもある。(ひとつはすぐ原稿を書くように強制されたり、そのためにあの巨大なプレスセンターで席と電源を取り合ったり、結果電気トラブルが起きて手持ちの機材が壊れてしまったりという可能性を回避できるということだが)それは、先に来た人たちが大体総括してくれているということだ。すなわちある意味で、見るべきものとそうでないものが既に分かっているとも言える。これは少なくとも一般的に言われているレベルでの話で、私の同僚からはアルセナーレ会場の、総合監督バーンバウムによる企画展「ファーレ・モンディ(世界をつくる)」が良い展示であると聞いたが、自分の眼で確かめてみると、議論の余地のないほど素晴らしい幾つかの作品はあるものの、同僚の意見には賛同しかねた。

3_SimoneBerti_Italy_Arsenale.JPG

アルセナーレに新しくオープンした敷地内後部は素晴らしい会場であった。ミランダ・ジュライの洞察深いインスタレーションと、シモーネ・ベルティの植物彫刻によるミニチュアのランド・アートが展示されている。楽しく個性的で、真に価値のある会場だったが、たくさんの虫に刺されてしまい、夏の終わりのビエンナーレの旅で最初の苦い思い出となった。

その後数えきれない程のレビューに目を通した結果、とても惹かれる作品をいくつか見つけた。しかし決して9月に期待することなかれ。これに関しては4年前からすでに解っていたことだが、その年も夏の終わりにヴェネツィアに出掛け、私はピピロッティ・リストの教会でのインスタレーションをどうしても見たいと願っていた。しかし作品は私が到着するちょうど前日に教会側の厳しい干渉によって撤去されてしまっていたのである。そして同じく楽しみにしていたオラファー・エリアソンの展示「ユア・ブラック・ホライズン」も当時メンテナンスのため閉館していた(しかし、これは幸運なことにこの夏ドゥブロヴニクを訪れた際に見ることが出来た。現在この作品は、クロアチアの驚異的な美を誇るロプド島にあるのだ)。

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そして今年、私はデンマーク&北欧館のために2人組のアーティスト、エルムグリーン&ドラグセットが制作した作品「ザ・コレクターズ」の鑑賞を心待ちにしていた。作品は想像を絶する素晴らしさだが、到着した時の私の落胆は計り知れないものだった。北欧館の外にあったはずのこの展示の象徴ともいえるインスタレーション(ある収集家の水死体がプールに浮いているというもの)が、既に解体されていたのだ。間違いなく言えるのは、9月のヴェネツィアは、6月はじめのヴェネツィアとは全く別の場所であるということだ(これは天気の話ではない)。

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見知らぬ誰かが密やかに持ち込んだゲリラアート(極めて機知に富んだものもあり、ある者はドイツ館の中に張り紙のメモを残し、臨場的なアルテ・ポーヴェラのエッセンスを加える試みを行っていた)にも心をくすぐられたが、ジャルディーニ会場のどこかで見つけた、車輪のない自転車のフレームというパブリックアートはとても痛烈な作品だった。しばらくの間私は、これは2ヶ月前に誰かが置き去りにした自転車の残骸かと自問したほどである。

9_VeniceStreetSigns.JPG

ジャルディーニとアルセナーレを出るとそこには果てしなく美しい風景が続くのだが、ヴェネツィアはとてもややこしい場所である。ビエンナーレのオーガナイザーはこの迷宮のような街の特性をよく知っているため、道路に貼られたステッカーが、メイン会場の外に数えきれない程ある各国のパビリオンへの道案内をしてくれるのだが、唯一の問題は9月になるとその殆どが見えなくなっており、ステッカーを認識するのと目的地を探して何度も歩き回るのとに大体同じくらいの時間がかかってしまうということだ。

12_Macedonia_2.JPG

もうひとつの問題は、機械を用いた作品の中に長く使われすぎて動かなくなってしまったものが出てくるということである(ヴェネツィアは湿度が高いということも忘れてはいけない)。例えばラトビア館のチェーンソーを用いた作品。もし動いていたらどのようなものだっただろうと、非常に興味を惹かれた。さらに、パビリオンの中には作品情報の書かれた資料がもう切れていたところもあった。マケドニア館のスタッフはこれを彼らの人柄でカバーするべく最善を尽くしてくれた。さらに最悪なことに、入口のサインが見えなくなってしまったがために展示会場であること自体がわからなくなってしまった場所まであった。(アッタ・キムの展示「オン・エア」の会場入口のポスターは激しい雨によってはがれ、下に描かれていた2007年の展示のポスターがあらわになっていた。)

13_AttaKim_OnAir_outside.JPG

注目すべき「工事中」作品のリストは続く。信じられないほど湿気ったグルジア館(かびたソファはもはや座ろうという気になれない)、ルクセンブルク館では2つのビデオ作品の窃盗があったし、いちばん衝撃的だったのはアルメニア館の絵画作品の下で見つけた犬の糞の小さなかたまり。こうした例を挙げながらも私は、ヴェネツィア・ビエンナーレが夏の終わりには魅力を失うため絶対に6月か7月に行くべきだという話をしているのではない。

14_Armenia_dogpoop.JPG

むしろ私が強調したいのは、ヴェネツィア・ビエンナーレは変化し続けるイベントであり、オープニングから2ヶ月か3ヶ月経った頃には全く違う顔を見せるということなのである。何もかも正常に機能していないにも関わらず(或いはそのお陰で)、秋のビエンナーレはとても好ましく、楽しく、そして落ち着いている。真のビエンナーレファンならば、ここを二度訪れるべきであろう。

The 53rd La Biennale di Venezia (Venice Biennale)
会期:2009年6月7日〜11月22日
会場:ヴェネツィア
http://www.labiennale.org

Text and photos: Daniel Kalt, ParisVienne.blogspot.com
Translation: Shiori Saito

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