トータス

PLACE

ロス・アンジェルスの西側にあるベニス・ビーチ。1970年代にはドッグ・タウンと呼ばれていたこの地域には、ヒッピーやスケーター、サーファー等の米西海岸を代表するストリート・カルチャーが盛んであると同時に治安の悪い地域でもあった。ここ最近では、すっかりドッグ・タウンという風貌はなくなり、毎日多くの人々が訪れる観光地となり、高級住宅もしばしば立ち並ぶエリアへと変化している。

そんなベニス・ビーチから内陸へ歩いて数分の場所にあるアボット・キニー・ブルバード。ここは8年ほど前から着目され、表のベニス・ビーチとは対照的な雰囲気でアートギャラリーや、各種セレクトショップ、アンティーク家具屋等の小さな店舗が沢山並んでいる。

トータストータス


毎月第一金曜日に開催されているナイト・フェスティバルでは、通常は19時くらいに閉めてしまう通りの店舗が22時ぐらいまで開放され、ライブコンサートや、DJパフォーマンスまたは各種イベント等、様々な試みを企画しながら盛り上げている。そういった日は夜遅くまで人通りもあり、地元の若者からセンスのいい大人やその子供達、又はペットまで陽気な賑わいを見せている。

2003年このアボット・キニー・ブルバードにオープンした「tortoise(トータス)」。今では2店舗目も同エリアで展開しているtortoiseは元々日本の家具メーカーでデザイナーとして活躍されていたオーナーである篠本夫妻のセレクトによる雑貨や小物から家具、または工芸品からアート作品までを広く取り扱っている。そのほとんどは日本製であり、ここに来ればどんなアメリカ人でも日本というイメージを改め、その奥深さを痛感するに違いないと感じられる場所でもある。

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開放感のある店内には見れば見るほど手に入れたくなるような繊細な彫刻から、実用的でオシャレな雑貨がほどよく置かれている。どの商品もアメリカを代表する人工的であり、大量生産主義的な文化とは真逆なスローライフを感じることができる。自然素材や伝統的な主観、長い年月があるからこそ仕上げられた、そんなコンセプトを感じることができる。日本人である僕も、ここアメリカで日本の繊細なプロダクトや伝統工芸品がモダン・デザインとしてインテリアに採用されていることを目の当たりにでき、とても嬉しく思えた。

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店舗に併設されているギャラリー・スペースでは、平野太呂による写真展「POOL」が開催されていた。空っぽのプールを映し出した写真集「POOL」は元々雑誌「relax」の取材で撮影した写真がきっかけになり、2005年にリトルモアより発表された。その後、国内外で写真展を開催してきた。今回は篠本夫妻の協力もありプール・スケーティング発祥の地であるベニスでの展示が可能になった。最近では映画「ロード・オブ・ドッグタウン」の公開により多くの人に知られるようになったプール・スケーティング。カリフォルニアのプールは日本のものとは異なり、底が丸くアールを描いているためそれを波に見立ててグルグルと滑る。それが、プール・スケーティングである。しかし、僕も含めそこには様々なディテールが存在していることを知る人は少ないと思う。

プール・スケーターはまず、空き家や廃墟にある使われていないプールを見つけることから始まる。「売り出し中」のサインがある家を狙ったり、時にはセスナをチャーターし上空から探すこともあるという。やっと見つけることができたとしても、通常はゴミが溜まりヘドロ状になっていたり、時にはプールの中に注射器が散乱していることもある。彼らはまず大きなゴミをプールから排除し、持参したモップでプールをきれいに掃除する。仕上げに排水溝等の障害物をガムテープで塞ぐ。この一連の作業を終えるとようやくプール・スケーティングを楽しむことができる。しかし、不法侵入であるこの行為に長居は禁物で程よく滑ったら次のプールへと移動して行くという。

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日本とは異なり街を走ればスケート・パークや、路面の良い広い駐車場も沢山あるのに、なぜ、そこまでしてプールにこだわるのか。その理由は経験してみないと分からないが、まず、どのプールも手作りであり、その土地や面積により設計されるもので同じものは存在しない。更に、プールをつくる会社によりアールの角度や路面、コーピング剤等が異なる。中でもスケーターに人気なのがブルー・ヘブン社のプールである。あとは、自分しか知らない秘密基地的な楽しみや、侵入しているというアドベンチャー感がプール・スケーターを魅了している理由である。

そんな、背景を汲み取った上で改めて作品を眺めると、吸水口を塞いでいる人の姿や、スケボーが滑り抜けた傷跡があったりとこのプール・スケーティングにかける彼らの熱意が汲み取ることができ、作品に何層もの立体感を感じることができた。

日本では中々認知されにくい空っぽのプールというモチーフはやはりここベニスでは違っていた。通りを歩く人々は足をとめてプール・スケーティングの話題をしたり、または70年代伝説のスケートチーム「Z-Boys」と直接関係していた人物も、たまたま足を止めて作品を眺めていたりしていた。

その日のオープニング・パーティは第一金曜日のナイト・フェスティバルということもあり、多くの人で深夜まで賑わいを見せていた。

POOL展は、11月30日まで開催。

tortoise
住所:1342 1/2 Abbot Kinney Blvd. Venice, CA 90291
TEL:310-396-7335
時間:水曜〜日曜日 12:00〜18:00
http://www.tortoiselife.com

Text and photos: Nico

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