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ル・ラボラトワール

PLACEText: Kana Sunayama

今日、世界中で現代美術を扱うスペースが大小問わず頻繁にオープンしている。
それぞれが、少しでも他とは違う自分たちなりの特色を誇示しようと、地域密着型だのデジタルアートだのと大騒ぎしながらも、結局プレスリリースに目を通せばどこも似たような内容でうんざりさせられるのも事実だ。

そんな中、街中に貼り出されるポスターもアート雑誌が組む大々的な特集もないにも関わらず、パリのマニアックなアートラバーの会話の中に忍び込むように上るようになってきた新しい空間がある。
その名は、ル・ラボラトワール

ル・ラボラトワール
Photo: © Alain Potignon

この 今までにない新しい試みのカルチャースペースは、2007年10月に科学者であり作家でもあるアメリカ人、ダヴィッド・エドワーズによって、パリの中心部に設立された。「アート」と「科学」という、一見全く交わることのないような二つの分野の境界線上で対立しながら生まれる、デザインや現代美術における実験的作品の発信の場であり、その名の通り、普段私たちが実生活で足を踏み入れることのない、ラボ、すなわち研究所でおこなわれている実験のプロセスに、大衆を招待しようというもくろみなのだ。

このスペースで行われる展覧会やイベントは、基本的に「アート」の世界から選ばれたアーティストと、「科学」の世界から選ばれた科学者のコラボレーションによって成り立つ。アートによって生み出される「創作」と、科学によって提示される「発見」は、実は交差するものなのではないか、という考えを前提に、ここでの「革新」が起こる。また「アート」と「科学」のどちらもが多くの場合、最終的に完成された、または結論に達した状態で発表されるという点にも着目し、何かが始まるそのときから終わりに達するまでの過程を、このスペースを利用して明るみに出そうという挑戦でもある。

ル・ラボラトワール
ベルエアー展 Photo: © Marc Domage

昨年10月に開かれた、造形作家ファブリス・イベールとバイオテクノロジー学者であるロバート・ランジェの「思考のためのマチエール」展を皮切りに、ル・ラボラトワールでは年間に3つの展覧会が企画される。

2007−2008年度には、インダストリーデザイナーのマチュー・ルアナーとハーバード大学で教鞭をとる科学者でル・ラボラトワールの創設者でもあるダヴィッド・エドワーズによる「ベルエアー」展、フォトジャーナリストのジェイムズ・ナクトウェイと映画監督アシャ・メイダーが、発展途上国の医学研究者たちとコラボレートしながら、第三世界にはびこる病に焦点をあてた「命のための闘い」展、ミシュランで2度も星を獲得した料理人のティエリー・マルクスと化学物理学者のジェローム・ビベットによる料理とコロイドに関する展覧会などが行われてきた。

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