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山海塾「降りくるもののなかでーとばり」

HAPPENINGText: Yuko Matono

北九州芸術劇場は、まさに夜の帳が下ろされたように真の暗闇に包まれていた。
9月20日、21日にかけて北九州芸術劇場で開催された、山海塾2年半ぶりの日本ツアー公演は、座席の誘導灯も禁煙のランプも消して、漆黒の闇を求める演出の徹底ぶりである。

山海塾『降りくるもののなかでーとばり』
TOBARI © Vincent Jeannot

山海塾は天児牛大氏が主宰する舞踏カンパニーである。1975年に設立され、1980年より現在までに世界43カ国で海外公演し、1982年からはパリ市立劇場を拠点として創作活動をしている。その山海塾が、今年5月にパリ市立劇場で世界初演した新作「降りくるもののなかでーとばり」の日本公演を、北九州芸術劇場からスタートさせた。

幕が開けると舞台中央には楕円のプラットフォームが現れる。楕円上と舞台背景には無数の星がちりばめてある。7つの章に分かれたシーンに応じて無数の星が光り瞬き、ステージは顔を変える。

山海塾『降りくるもののなかでーとばり』
TOBARI © Jacques Denarnaud

舞踏手はゆっくりと情感たっぷりに動いたかと思うと、突然鋭い動きを見せる。鳥のように見える動き、水面をなぞっているような動き、時になめらかに、時に激しく、時にゆったりと、肉体の限りを尽くして、ありとあらゆる表現のバリエーションを見せてくれる。

それでいて肉体はまったく音を出さない。微かに聞こえるのは、衣装の衣擦れの音や、舞台に倒れる時に出る音くらいである。その静寂の中で、人間の肉体はこんなにも豊かな表現ができるのかと舌を巻く。砂漠を思わせるシーンでは極限状態の人間の生命力を感じた。ある時は、宇宙にある違う星に来たような新しい世界が広がった。

山海塾『降りくるもののなかでーとばり』
TOBARI © Vincent Jeannot

そして、圧巻は天児牛大氏のソロである。圧倒的な存在感と表現力。声にならない咆哮が聞こえる。筋書きの無い物語が見える。言葉にできない感情が天児氏の体中から溢れ出し、こちらの感情まで揺さぶられる。文化の違いも言語の違いも越えて、私たちの胸に迫ってくる。

肉体が繰り出すパフォーマンスと舞台美術や衣装の美しさ、感動を引き出す音楽、全てが融合して一つの大きなアートを創り出している。だからこそ、国内外で高く評価されるのだろう。
10月1日から5日にかけて、世田谷パブリックシアターで上演が行われる。フランスではチケットが入手困難とも言われたこの舞台を、この機会にぜひ堪能してみて欲しい。

山海塾「降りくるもののなかでーとばり」
日時:2008年9月20日(土)、21日(日)
会場:北九州芸術劇場
住所:福岡県北九州市小倉北区室町1丁目1-1-11
料金:全席指定 4,500円(当日5,000円)
演出・振付・デザイン:天児牛大
音楽:加古隆、Yas-Kaz、吉川洋一郎
舞踏手:天児牛大、蟬丸、岩下徹、竹内晶、市原昭仁、長谷川一郎、松岡大、浅井信好
共同プロデュース:パリ市立劇場、北九州芸術劇場、山海塾
世界初演:2008年5月パリ市立劇場
https://www.sankaijuku.com

Text: Yuko Matono

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