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ボブ&テリー・リチャードソン展

HAPPENINGText: Naoko Wowsugi

親子二代にわたり挑発的なアプローチのファッション・フォトグラファー、故ボブ・リチャードソンテリー・リチャードソン親子の写真展が同時期に別々の場所で開催された。ボブ・リチャードソンは、ファッション・フォトグラフィーを芸術の域にまで高めた60年代を代表する写真家。六本木のゼル・カフェ/ギャラリーで催された写真展では昨年、息子テリーが編集したボブの写真集「BOB RICHARDSON」からテリーがセレクトした作品と、ボブが2005年に78歳で亡くなる前に愛犬ミックと出かけたロードトリップで撮影した作品が並び、プライベートとビシネスで常に写真と共に生きてきた写真家ボブ・リチャードソンを感じ取れる。

ボブ&テリー・リチャードソン展
© Bob Richardson

ギャラリーを内包する壁一帯に並列されたロードトリップ作品に写されたものは、愛するアートとアメリカという国、その一方で嫌疑的に見つめるアメリカの政治。カメラを通して冷静に切り取ってきた風景にはボブの淡々と物事を見つめる視線がある。そして時折添えられる彼のスケッチブックへの走り書きには78歳になっても常に本質を追求しようとする姿が強く写る。この彼のスピリットはギャラリー中心部に展示されているファッション写真家としての作品にも写り込んでいる。ファッション・フォトグラフィーは常にフェイクさが漂うものなのだが、そのフェイクさをあえて際立たせ、その中に写る人物に人間性を与える。撮影現場をも被写体にし、多くの作品の中に鏡を比喩的に使い、現実と虚像を共存させ写真そのものをも提議する写真。こうして60年代のファッション・フォトグラフィーに生命を与えたボブのアーティストとしての根幹を知ることのできる写真展となった。

ボブ&テリー・リチャードソン展
© Terry Richardson

一方、息子のテリー・リチャードソンの写真展はラフォーレ原宿のラフォーレ・ミュージアムで行われた。アメリカMTVの番組「ジャッカス」の現場で自らも被写体となり撮影した作品群。クレイジー(もしくはJackass)という表現が一番適した写真展。ある一定の距離をおきながら被写体を的確に捉え、かつ躍動的なテリーの写真は刹那を何度も甦らせる。彼は常に反逆児である。コンパクトカメラのみで撮影をするファッション・フォトグラファー。このパンクでセンセーショナルな手法は、またしてもファッション・フォトグラフィーというフェイクに「生」を吹き込んだ。

親子展だと聞き、別々の場所で開催されるのに最初は違和感があったのだが、実際には違う空間で催すことが最善策だと納得をするほど二人の作品はそれぞれに強烈だ。スタイルは違えども、常にファッション・フォトグラフィーにおける時代のフェイクや予定調和に対し敏感にリアルを示してきた親子。亡くなった父の写真集を編集し、今回の親子展のために来日もしたテリーのヒューマニティーとボブ・リチャードソンの展示会に飾られていたファミリーポートレートが、この写真展を振り返り印象に残った。

ボブ・リチャードソン展
会期:2008年4月25日~5月8日
時間:10:00~22:00(最終日~20:00)
会場:ゼル・カフェ/ギャラリー
住所:東京都港区六本木5-10-25
https://www.zelcg.com

テリー・リチャードソン展
会期:2008年4月26日〜5月8日
時間:11:00〜20:00
会場:ラフォーレミュージアム原宿
住所:東京都渋谷区神宮前1-11-6 ラフォーレ原宿 6F
TEL:03-3475-0411
https://www.laforet.ne.jp

Text: Naoko Wowsugi
Photos: Courtesy of American Apparel and VICE JAPAN © the artists

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