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デビッド・オライリー

PEOPLEText: Peta Jenkin

アニメーターのデビッド・オライリーの作品に際立っているなと思う点は多々あるけれど、最初の印象では、スクリーンの中で爆発してバラバラに崩壊する、ピクセルの集まりのような生のグラフィックや、典型的コンピューター・アニメ映像にありがちな伝統的しきたりに無関心なところが特徴だ。彼は3Dをこよなく愛するが、それも全て不当な理由からだ。ツルツルとした反射する表面、重々しいレイトレーシング描画、ディズニー風のくだらないナレーション、これらは忘れてほしい。ユーモアのある、たまに、撹乱するようなエフェクトを用いながら、カラフルなゲームスタイル・グラフィックの持つキュートな部分とシュールで邪悪なアイロニーたっぷりの物語を組み合わせているのが、ここにいる型破りな3Dっ子だ。

ベルリンのクロイツベルク地区にあるカフェでコーヒーを飲みながら、彼のキャリアや映像制作について、最近になって彼がベルリンへ引越してきたことなど、気ままにおしゃべりをした。

デビッドは、まだ学生だった頃に彼の初めてのアニメ作品をデザイン会社のグル、シャイノーラに送った事がきっかけとなり、飛躍的なスタートをきる事となった。彼らの反応は完全にポジティブなもので、数少ない実績ながら後にシャイノーラ・プロジェクトに参加することとなった。

『3Dキャラクターのアニメーションなんてやったことなかったんだから、彼らにしてみたらとんでもない賭けだったと思う。でも僕を急に困難な状況に追いやったというのは、抱えきれないほどの事を与えることで僕が溺れていくか、泳げるようになるかを見るには一番いい方法っていうことを彼らは分かってやっていたんだと思う。』

そうして、昼間は「Studio AKA」で仕事。夜はシャイノーラでフレームの大量生産という、トーストと豆でしのいでいく生活が続いた。それは19才の彼とっては至極普通のことだった。

『シャイノーラで学んだ事はすごく重要なことで、自分の全てを捧げることなくして素晴らしい仕事なんかできないんだってこと。ワーカホリックな人たちの中にいたから本当に伝染するんだ。彼らはどう生活していかないか、ということを教えてくれたよ。』

アニメーターを目指す人たちはみな注目。長くつらい仕事のための準備をしましょう。思い浮かべて下さい。何時間もコンピュータの前にかがみ込み、夜中はコーヒー、ベイクド・ビーンズ、たばこで何度も中断するということを。
デビッド・オライリーにとっては、そんな長時間の貧しい食生活を過ごした甲斐あって、今ではBBCやソニーといった企業をクライアントに持ち、一年をのんびりとしたペースで仕事に望み、余った時間には映像作品の制作に打ち込むことができるのだ。

デビッド・オライリー
Stills from David’s new series PSS

そんな彼はちょうど新シリーズの第一話となる「PPSープリーズ・セイ・サムシング」を制作したばかり。それは1匹の飼いねずみと1匹の飼い猫が未来都市のフラットに一緒に暮らすというシュールなコミック仕立ての物語。それは、さながら下品なところを除いたレン&スティンピー風アニメだ。デビッド曰く『時速90万キロの感情で駆け抜ける、30秒間の猛烈に胸の張り裂けんばかりのインターネット・ターボ・ドラマ。』

この新シリーズでデビッドがどんな反応を受けることになるか楽しみである。2005年に制作したショートフィルムの「RGB XYZ」という作品ではかなり多くの批評家からの称賛を受けているからだ。この数年前の作品は、最近になってからも多くの注目を集め、世界中の映画祭やアニメ・フェスティバルで取り上げられており、今年のベルリン映画祭では佳作賞を獲得している。

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