BIWAKOビエンナーレ 2007

HAPPENING

視覚の変容-それは現代における視覚芸術の可能性のひとつだと言える。

BIWAKOビエンナーレ 2007

今回紹介する滋賀県近江八幡市で開催された「BIWAKOビエンナーレ2007」もこの可能性に根ざした興味深い展覧会だった。

この展覧会は造形作家の中田洋子が2001年大津よりスタートさせた企画で、2004年近江八幡市で開催された2回目を経て、今回で3回目となる。 滋賀県近江八幡市は、近江商人発祥の地として現在もなお商家の町家や堀の残る旧市街としての街並を残した美しい地方小都市で、近年は京都や奈良につぐ観光地として近畿中部北陸を中心として訪れる旅行客も多い。また都市と農村のグローバル化が進んだ現代日本に於いて、古くからの文化的財産を残す類い稀な街であるとも言える。 その様な状況を背景に、今回のBIWAKOビエンナーレは『Genius Loci-風土』と題している。Genius Lociとはラテン語で地霊、八百万の神を意味し、土地固有の「風土」と言い換える事も出来る。現在使用されていない商家の町家を展示会場として用い、美術ファンのみならず訪れる観光客、そして地元の近江八幡市民に視覚の変容、失われてしまった風土の回復を試みる事をコンセプトとしている。

BIWAKOビエンナーレ 2007
喜多利邸


近江八幡のかつての経済の大動脈であった八幡堀に面した喜多利邸は、畳問屋の所有した町家で、巨大な蔵が二棟、小粋な調度品をしつらえた二階建ての離れ、そして二階建ての母屋を持つ豪華な作りで、今展覧会で最多10組のアーティストが展示をしていた。 全体の傾向として、建物の造りを利用したインスタレーション的な展示が多く見られた。

BIWAKOビエンナーレ 2007
堀江崇

写真家の堀江崇は爽やかな風を想起させる空間演出の中に写真作品を展示している。同じく斎藤寛は自らの作品のモチーフである仏間を利用し、「代々受け継がれてきた遺産」という作品の根幹となるコンセプトの一部を演出の要素として取り入れている。

BIWAKOビエンナーレ 2007
松尾郁子

また松尾郁子は岩絵の具や膠といった日本画の技法を用いた絵画やオブジェを展示しているが、和室としてひろがる空間の構成要素として床、床の間、砂壁の質感を上手く利用して展示している。 竹田直樹は、母屋と離れを挟む庭にある灯籠を用いて作品を展開していた。火袋を物語の一コマとし、人生に於ける欲望についてを一連のストーリーとして見せていた。

BIWAKOビエンナーレ 2007
田中哲也

喜多利邸に住みながら制作を続けた小板橋慶子は、離れの1Fで繭を素材としたインスタレーションを、田中哲也はその上階で、SF的な造型物と近未来的な茶器を展示、会期中には茶会も催された。高見晴恵は蔵の中に広がる埃とシンプルかつ大量の紙細工で「時間と闇」を蔵の中に体現した。

BIWAKOビエンナーレ 2007
田辺磨由子

一方で田辺磨由子は蔵そのものの暗がりの中に、静かながらも熱い印象を抱くインスタレーションを展開していた。 満田亨は琵琶湖に生息する魚や植物をモチーフに、切り絵の可能性を追求した作品を展示していた。

BIWAKOビエンナーレ 2007
シュテラ・ゲッペルト

その陰ではひそかに、それとは対照的にシュテラ・ゲッペルトの作品は、壷の底に空けた穴から広がる予想を裏切って広がる視界で以て、日常に潜む密やかな『地霊』、というコンセプトを体現していた。 なお、この喜多利邸では会期中縁側で御膳を利用したカフェで、コーヒーやゆず茶が楽しめた。

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