北京「798芸術区」

PLACEText: Koh Sang-Hyuk

中国の現代美術といえば、日本やアメリカで発表する少数の作家たちの作品を目にするだけという時期が長く続いてきたが、北京の798芸術区の動向が頻繁に伝えられるようになって、ようやく中国国内における様子が伺い知れるようになった。


Courtesy of Platform China

7月中旬の3日間、250余のギャラリーが集中する798芸術区とそこから東へ車で30分ほどの通州区宋庄鎮のギャラリー街、さらに幾人かの中国人アーティストのアトリエを訪ねてきた。平面の作品で言えば概観的には、3つの傾向に大別できるようだ。一つは、伝統的な南画的表現に依りながらも、現代を主題としようとするもの。二つめは、中国近現代史(とくに文化大革命)をテーマにオーソドックスな欧米現代美術史の文脈のなかで表現するもの、みっつめは日本の漫画(オタク)文化に触発されたとおぼしき中国現代ポップアートである。


Photo: Dohjidai Gallery of Art

残念ながら今回の短い滞在のあいだに、特筆すべきすぐれた作品にあまり出会うことはできなかったが、たまたま訪ねた20代の若い作家たちが寄り添って郊外の共同アトリエで制作する姿の背後に、広い国土で無数の表現者たちの胎動が感じられ、中国現代美術の豊かなポテンシャルが察せられた。


Courtesy of Platform China

「798」に集う多数のギャラリーのなかには、少しばかり運営的な危うさが感じられるものもあったが、中国経済そのものがバブル的状況にあることを考えれば、ギャラリー個々の浮沈や入れ替わりが多少激しくとも、やむを得ないことだろう。アーティストたちがそうしたことに振り回されず、できることならオルタナティブな発表の場や機会をたくましく見つけ出していってくれるといい。同時代ギャラリーとしては、そのような方向で中国の若い作家たちの役に立っていきたいと考えている。

798芸術区
住所:北京朝陽区酒仙橋4号
https://www.798art.org

Text: Koh Sang-Hyuk

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