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ヨーン・ボック 展「リュッテと男たち」

HAPPENINGText: Yoshito Maeoka

『女神もいれば娼婦もいる。』現代美術に興味を持ち始めて間もない頃、あるひとが私にそう語って聞かせてくれた。様々な表現や作品が存在するからこそ美術は素晴らしい、そのような彼の姿勢を象徴するとても印象的な一言で、私の影響を受けた考え方のうちの一つだ。しかし、今回紹介するヨーン・ボック「Lütte mit Rucola」(リュッテと男たち)展において私が見たものは、女神でもなく娼婦でもない、人間の理性を越えた切迫した表現とも言える映像+インスタレーションだった。

この展示のメインは二部屋に分かれており、最初の一室には雑に散らかった小部屋風のインスタレーション、奥の部屋でアンティーク調の椅子やソファーの並ぶ部屋で映像作品の上映、という構成になっていた。

最初の部屋は、ある散らかった部屋の様子が再現されているような様子だった。しかし、何処か普通の散らかり様と違う、奇妙な構成。中央に置かれた机には万力で棚が固定されているし、所々に奇妙な装置の様な細工を施した道具類が置かれていた。その他意味をつかみきれない構成の家具類が雑然と並んでいた。そして赤い絵の具が血のように辺り一面に飛び散っていた。

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