ホームレス・サッカー・ワールドカップ

HAPPENING


『2003年10月、バーでコーヒーを飲みながら、雑誌「Hecho en Buenos Aires」を読んでいると、去年のチャンピオンシップについてのある小さな記事に目がとまったんだ。とっさにその記事にしるしをつけ、このストーリーを伝えようとこのドキュメンタリーを書いたよ。』とダミアンは言う。『これがすべての始まりなんだ。』

ダミアンは、2004年スイスのグーデンバーグで開催された、「ホームレス・サッカーワールドカップ」に出場したアルゼンチンチームの参加と練習についてのドキュメンタリー映画「The Other Cup」の脚本家であり、プロデューサーであり監督でもある。
この選手達はブエノスアイレスのホームレス雑誌「Hecho en Buenos Aires」によって集められ再結成をしたチームであり、彼らは2004年の7月にスウェーデンへと旅たった。

これは単なるホームレスを撮った作品ではない。サッカーチームの映画である。ドリームチームではないが、たった一日だけでもいいからヒーローになるために夢に向かってプレイをするホームレス達のドキュメンタリー映画である。

ラテンアメリカ人のジャーナリストが『遠征費を出してもらう代わりに、ブエノスアイレスで生活するための資金を払ってもらった方がいいとは思わないか?』と、聞いた。『いや、僕らみんなサッカーを愛してるんだ。だからこれは素晴らしい経験なんだよ。お金だけがすべてじゃない、サッカーなんだよ。』ホームレスのマラドーナ、我らがヒーロー、オーマーの答えである。

ダミアンは何年間もリポーターとして働いた経験のある、アルゼンチン人のジャーナリストでありフィルムメーカーだ。テレビやブロードキャストのために政治や社会問題を調査をしたり、地元の映画制作にも携わっていた。
彼は非常に高いプロフェッショナル意識を持つ反面、また親しみやすい青年でもある。気取らなく、しゃれを持ち合わし、地元独自のユーモアを使い選手達と仲良くやっていった。

映画の中だとダミアンは選手達の一人のように見えるが、それ以上に彼は教師、通訳またガイドでもある。ホームレス達の人生の証人になり、グループの中で沈黙のメンバーとなった。彼らと共にするこの旅は責任さえも感じはじめていた。
離陸時間がきたとき、毎日ホームレス達との関係を築くじゃまをしていた他の映画スタッフなしで、ダミアンは選手と共に独りになることを決心した。みごろ彼の行動は成功し、彼らはダミアンを受け入れ輪に入れてくれた。

このアルゼンチンチームはトーナメントの勝者ではないがある意味の勝利者である。我々にとっては選手みんながマラドーナだ。彼らの幸せや期待、飛行機に乗ることの恐怖、幼稚な案内の必要性、女の子をナンパすることを感じ、すべてにおいて勝ってもらいたいと思う。それができる人間ということを我々は知っている。映画では彼らの空想の世界への旅となっているが、ほんの少しの間はこれが現実の世界だ。

「The Other Cup」は「ブエノスアイレス・インデペンデント映画祭(BAFICI)」の前進中作品として上映され、またスウェーデンのグーデンバーグで開催された国際映画祭に出品した。そしてまさに今ダミアンは、「ジバラ・プアー映画祭」でのコンペティションのためにキューバにいる。

『スウェーデンで映画が上映された時、観客が笑ったり、何が起きていたかを理解してくれたり(理解してくれなかったらどうしようかと心配だった!)と、観客が楽しんでくれていることに気づくまで不安でたまらなかったよ。そのあとは少し落ち着いてみれたけどね。多くのシーンで観客が思いっきり吹き出したり、本当にあの光景が信じられなかったよ。』ダミアンはそのときの様子を思い出していた。

『上映がすべて終わると男の子がやってきて僕にサインを求めてきたんだ。これは何かの企みかと思ったけど彼は本当にサインをせがってきたんだよ。また、女の子がサウンドトラックについて質問してきたりしたんだ。極めつけは次の朝さ!これは本当に驚いたよ!招待客のひとりの婦人がやってきて、僕がボールをキックしている写真を映画祭公式雑誌の表紙にどうかって尋ねてきたんだよ!これで僕は表紙を飾った男だと胸張って言えるね。』

私は「The Other Cup」を何度も観た。心を動かされ涙がでてきた。この涙には悲しみと楽しさが交わっている。そんな世界に連れてこられ囲まれている感じがした。この正解は、人間であるために自分を責めることを抜かして見ることはできない。

しかしながら元気で希望に満ちた「The Other Cup」の精神を目の辺りにし、少年たちの幸せを感じることによって人生というものをもっとシンプルに考えるようにした。また、この大会の背景にあるすべてのチーム同士のありのままの兄弟愛を感じることができた。
今、ダミアンはありきたりな生活から離れ、少年達がほとんどの時間を過ごしている輝かしい夢の世界の一員となっている。

Text: Gisella Natalia Lifchitz
Translation: Chiyoko Jimba

【ボランティア/プロボノ募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
コントワー・デ・コトニエ公式通販サイト | 2016 SUMMER SALE
MoMA STORE