DAF東京 2005

HAPPENING

NHKの番組「デジスタ」の愛称で親しまれる「デジタル・スタジアム」で紹介された若いクリエーターの作品や国内外のアーチストを招待し、パナソニックセンター東京日本科学未来館を会場として、12月9日から13日の5日間、「デジタルアートフェスティバル東京2005」(以下DAF)が行われた。
2003年から始り、今回で3回目となったこのフェスティバルは、日々進歩するテクノロジーの歩みとリンクするアートと若い感性にスポットライトをあてる。


会場となったパナソニックセンター東京は、無人の電車が行き来する近未来都市の景観を持つ東京湾に浮かぶ人工島の上に建っており、まさにデジタルアートという、テクノロジーと密接な関係を持つ表現を展示するのにうってつけの場所でもある。会場に入る前にすでにこのような景観から受ける興奮は、フェスティバルへの期待を抑えがたいものとして演出する。

会場へ一歩足を踏み入れると、そこはまさにフェスティバルというに相応しい、充実した作品群が展示され、このフェスティバルのもう一つのコンセプトでもある、観客が参加し体験するというのを表すかのように、いたるところで作品を手に取り操作しているさまが見受けられた。


橋本 悠希+大瀧 順一朗+小島 稔+永谷直久+古川 正紘+山本 暁夫+三谷知晴+宮島 悟+稲見 昌彦 / Augmented Coliseum

電気通信大学稲見研究室のチームによる作品「Augmented Coliseum」は、ロボットとコンピューターグラフィックスを使用した、対戦型シューティングゲームのような作品で、実物の戦車型ロボットがプロジェクターで投影された映像の上を動き回り、その動きと連動して映像効果も現れるというもの。遊び心とテクノロジーが程よくミックスされ、観るものを惹きつける。


後藤映則 / view rise

後藤映則の「view rise」は天井から吊り下げられた無数のプロペラに映像が投影され、観客が持つ端末の操作によって、映像が変化していく。ランダムに設置されたプロペラに映し出される映像は不思議な奥行きと動きがあり、なおかつ天井を見上げるために、仰向けに寝なければならない行為が一層、対峙する観客を作品へと集中させる。
また、展示中は作家本人から今回の作品についてや今後の展望などの説明をうける機会などがあった。


和田裕介+臼井旬+瓜生大輔 / moo-pong

「東京ガジェット展」ではより一層遊び心とユーモアを持つ作品があり特に、和田祐介、臼井旬、瓜生大輔による共作「moo-pong」は、カプセルが入ったケースの穴を覗き込むとそこには様々な風景や場面の映像が万華鏡のように変化をする。またそのカプセルにはその場で新たに撮影された映像を記憶させ、新たな映像の万華鏡を覗くことも可能で、今すぐにでもおもちゃとして製品化されそうな作品であった。

以上3組のアーチストは「デジスタアーチスト」で、いわゆる「デジスタ」でアワードなどを受賞した経験を持っている。他にも多くの「デジスタアーチスト」が出展していた。


岩井俊雄 / TENORI-ON (2005)

また、招待アーチストとして、岩井俊雄の作品も展示されており、以前誌面でも触れた「TENORI-ON」などが一般の人にも開放されており、一度触ってみたいと考えていたので、このような機会を持ち大変興奮を覚えた。


児玉幸子 / モルフォタワー (2005)

アルスエレクトロニカにも出展している、児玉幸子の「モルフォタワー」は不思議さと妖しさと美しさを併せ持つインスタレーション。磁性流体という一般にあまり見ることはないが、HDにも使用されているという液体を使い、コンピューターの制御により磁力を発生させ、刻一刻と変化する液体の彫刻は、拝見したときちょうど居合わせたご本人から、メカニズムを説明されても重力を無視して変化する液体という信じがたい体験を観る者にあたえる。

今回のDAFは上げたもの以外にも多くの優れた作品、アーチスト、クリエーターが参加しており、テクノロジーとアートと人の様々な関係性を体験することができた。また、作品に触れ合うだけでなく、作家本人のパフォーマンスなども行われていた。
とりわけ、日本科学未来館で行われたライヴパフォーマンスに触れないわけにはいかないだろう。


Julien Maire / Demi-pas (2002)

日本科学未来館の館長でもあり、宇宙飛行士の毛利衛さんの挨拶で始まったスペシャルプログラムのライブパフォーマンス。まずは2年前のトランスメディアーレの記事でも触れた、ジュリアン・メールによる「Demi-Pas」からはじまり、ゴラン・レヴィンとグレゴリー・シャカーによる「Scribble」という2000年のアルス・エレクトロニカ・フェスティバルのために作られた『視聴覚的物質』というコンセプトを持つ作品のライブパフォーマンス。2つのスクリーンには光の線によって抽象的なイメージが描かれその線と呼応して、こちらもまた抽象的な音も生成され、完璧に視覚と聴覚から入ってくる情報はリンクしていることが伺える。


Zachary Lieberman + Pardon Kimura / Drawn (2005)

そして、全く新しい映像と音楽体験と大きな興奮を覚えた、ザッカリー・リーバマンとパードン・キムラによる「DRAWN」は、ライブドローイングがスクリーンに映し出され、その中で突然動き出し同時に音楽も奏でるという、全く見ていて信じられない作品であると共に、その音のクオリティーも素晴らしくその瞬間に立ち会えたことを幸運と思える作品でもあった。様々なソフトウェアにより、音と映像の同時性が追求されているが、この作品が使用しているテクノロジーは大きな可能性を持っていることを観客は驚きをもって受け入れただろう。


Golan Levin + Gregory Shakar / Scrapple (2005)

また、こちらもゴラン・レヴィンとグレゴリー・シャカーによる作品「Scrapple」は「DRAWN」とは別のアプローチから音と映像の同時性によるパフォーマンスを追及していて、カメラがテーブルをスクリーンに映し出し、映し出された映像には走査線が画面の端から端へとずっと同じ進行方向とサイクルで動き、その上に置かれたオブジェクトが走査線に触れると音がでるという仕組み。画面の端から端を1小節で上下を音階と捉えるとオブジェクトは音符の役割を果たす。是非素晴らしいミニマル・ミュージックの演奏家とのコラボレーションを期待したい。


Golan Levin + Zachary Lieberman / The Manual Input Sessions (2004)

プログラムの最後にはゴラン・レヴィンとザッカリー・リーバマンによる、影と色彩豊かなカラーが大変美しい「The Manual input Sessions」のパフォーマンスも行われ、実に内容の豊かな数々のライブパフォーマンスが日本科学未来館を舞台にして行われた。


柳澤真梨奈 / Howlin

上にあげた音と映像のパフォーマンス以外にも、パナソニックセンター東京で行われた、デジスタ・アーチストで参加している柳澤真梨奈による「Howlin」も非常に好感を持てる作品で、音響の世界では忌み嫌われるハウリングという現象を全く別の角度から解釈し、一般的には排除される音で演奏を試み、またその装置を作り上げるという姿勢に尊敬を覚えた。

以上のようにあげれば切がないほど、多くの作品が展示されているフェスティバルであり、その分野はデジタルアートという分野が持つ多様性と同じく、多方向にまたがり、シンプルなフェスティバル名にふさわしい内容を持っており、ここで紹介された若いクリエーターだけに留まらず、このような機会に触れた観客の中から今後必ず次世代のアーチストやクリエーターが生まれていくのではないかと感じるほど、刺激とアイデアと活力に満ちていた。

デジタルアートフェスティバル東京 2005
会期:2005年12月9日〜13日
会場:パナソニックセンター東京/日本科学未来館
主催:デジタルアートフェスティバル東京2005実行委員会
   (NHK、株式会社NHKエンタープライズ)
制作:デジタルアートフェスティバル東京事務局
   株式会社NHKエンタープライズ
http://www.daf-tokyo.jp

Text and Photos: Yasuharu Motomiya
Photos: Photoperformer Pas

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