モーマス

PEOPLEText: Francesco Tenaglia

モーマスは常に日本に興味を持ってきた。彼がまだ7歳のときに「僕は日本が見える」という曲を作り、彼はその曲を1998年に出したアルバム「Little Red Songbook」に収録した。時間が経つにつれ “太陽の昇る国” は彼にとってつきる事のないインスピレーションになり、それはかれの仕事のモチーフになり第二の家にもなった。ニック・カリーは自身の論文「キュート・フォーマリズム(かわいい形成主義)」で日本の消費社会の全てのレベルに蔓延する、洗練された形成主義について議論している。

『“かわいい形成主義”という言葉は、2001年に東京のある高級な街頭を歩いていたときに思いついた。チャイルドディスクというレコード会社から出ているレコードを買いに行く途中で、その子供のような形成主義について考えていたのかもしれない。なぜならそのレコードはとても形成主義的でアヴァンギャルドな方法であるコラージュやデコパージュなど、とても発達した手法と洗練された技術を使っていたんだけど、同時に子供のような陽気さをかいま見る事もできたんだ。しかし西洋にはシュトックハウゼンやグリーンバーグなどの恐ろしくて力強い20世紀アヴァンギャルド形成主義があり、日本には消費者バーションのフェミニンで幼稚な、西洋とは全く違ったアヴァンギャルドがあるように思えたんだ。僕が日本に対して感じていたことのひとつに、これから消費社会の発展によって僕たちの文明も同じく日本のように女性化して行くのではないだろうかということだった。そして “かわいい形成主義” について考えていたとき、僕は原宿にあるデパート「ラフォーレビル」の前を歩いていた。ラフォーレビルの最上階には美術館があるよね。僕はアートはショッピングの続きでありショッピングもアートの続きであり、それらが双方向で作用しているということを目の当たりにして、そこでのショッピング経験はとても洗練されたものであり、清教徒的な恥は全くないということに気づいたんだ。』

昨年、ニック・カリーはニューヨークのギャラリーでウエダ・マイとのパフォーマンス展「I’ll Speak, You Sing」に参加した。会期は三週間のものだったが、彼はその三週間のギャラリーの開館時間中ずっと物語を即興で作りパフォーマンスをしていた。『その結果としてより大きな美術館で3ヶ月間パフォーマンスをしてほしいと依頼されたよ。もちろん毎日美術館に入りパフォーマンスをするのだけど、まだ正式に発表されていないから、ここでその美術館の名前を言うことはできません。』この展示は彼がLFLギャラリーで行った個展「フォークトロニック」に続く展示であり、その展示でモーマスは想像上の国におけるポピュラーカルチャーをパフォーマンスとして濃縮した。それは20世初頭のアメリカの田舎地方を人工的なデジタルバージョンにしてギャラリーに来た人々の生活を即興で作曲し、彼のアルバム「フォークトロ」をそれらの人々バージョンで録音をするというものだった。

『僕は日頃からアートを副業としてとても興味を持っている。僕の知る全てのアート学生はアート世界に対して皮肉的で辛らつだな。それは彼らがアートにとても近すぎるところにいるからで、アート世界をただのアイディアのスクラップブックとして見る事ができることを知らないと思う。例えば僕にとってベネツィア・ビエンナーレの80パーセントは役に立たない。でも他の20パーセントはとても面白かった。とくにセルジオ・ベガの作品はとても好きだった。違ったものを一緒にしたらとても面白い合成物が作れると思う。このような考え方は常にアートの世界では行われていることなんだ。みんなとても変わった個性的な関連性を持っていて、感性的に保守的なポップミュージックにはないかな。』

現在モーマスはベルリンに在住している。モーマス曰く、ベルリンはポスト労働都市のようだ。なぜならそのポストインダストリアルな人々のリラックスした様子かららしい。モーマスはデザインコミュニティーで自身の存在を確立している。彼は自身のCDジャケットデザインを委任で行い、そのデザインとともに音楽もとてもおもしろいものになっている。例えば「オスカー・テニス・チャンピオン」のためにフロリアン・ペレットがデザインした木片に覆われた素晴らしいステージデザイン、そしてジェームス・ゴッギンによる曲がりくねった2面パターンの「オットー・スプーキー」のデザインは特筆すべきものだろう。

インタビューはモーマスにとって今までで一番魅力的だった視覚経験についてと、これからどんなデザイナーとコラボレーションしてみたいかと言う質問で終わることになった。『自然やチャンス、そして神を僕たちは究極のデザイナーと呼ぶよね。飛行機から世界を見下ろすのがおそらく僕の最も好きな視覚経験かな。それと僕はデザインを適切にすることができるなら誰とでもコラボレーションしてみたいね。』

Text: Francesco Tenaglia
Translation: Masanori Sugiura
Photos: Nick Currie

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