スコープ・ロンドン 2005

HAPPENINGText: Sayaka Hirakawa

なにも、ミュージアムやギャラリーだけが、アートと出会う場所ではない。秋のロンドンは、アートフェアがまさに目白押しといった中、その開催場所が実にユニークである。

まず向かうのは、ロンドン中心地、トラファルガー・スクエアからすぐのセントマーチンズ・レーン。もちろんここには、フィリップ・スタルク・プロデュースのデザインホテル、セントマーチンズ・レーン・ホテルがかまえている。そのファーストフロアを全て使って行われているのが、インターナショナル・アートフェア、スコープ・ロンドンである。

50組の国内外から集まるギャラリストが参加する中、ゲストは、セントマーチンズ・レーン・ホテルの客室を一室ずつ訪れ、そのミニマリスティックな空間に、突然現われた作品群を鑑賞する。

さてその119号室で、素敵な女性アーティストに出会った。リウバというパフォーマンスアーティストだ。ビデオ作品の中での彼女は、スタイリッシュな黒いミニドレスに黒いレディライクなグローブ、それに黒いベールをつけている。そして、その全てに、さらには露出されている肩や腕の部分にまで真っ赤なドットのシールをいくつも張り付けていた。作品タイトルはウィルス、という。

ウィルスをまとった彼女は大きなアート展覧会のオープニングパーティへ行く。そうして、さもエレガントな仕種で、展示作品の横の壁に、その真っ赤なシールを張って歩く。アート界において、赤いドットのシールは売約済み、を意味する。でもね、と彼女はいう。『そのシールを張るだけで、人はその作品に興味を持つの。』誰かがその作品を買ったということが、その作品を評価する一番の要因になっているのだと。小さな赤いドットが、いかに大きな影響をおよぼすか、まさにウィルスの仕業である。

ビデオは彼女を追って、パーティーで出会う人たちの反応やさらにはギャラリーの対応を写していく。『ミラノのミュージアムでは、わたしのパフォーマンスをアートとして喜んで受け入れてくれたけれど、ニューヨークのギャラリーからは、つまみ出されたの。』確かに、ギャラリストにしてみれば、すでに売約済みの印がはってあれば、誰も作品を買ってくれないのだから、さぞ憤慨したことだろう。いくら、彼女のウィルス姿が魅力的でも。

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