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肖像写真展

HAPPENING


「人間の顔を被写体にした写真」と言われて、何が思い浮かぶだろうか。

入学式の集合写真や結婚式等の記念写真、下敷きに挟んだアイドル写真、パスポートや運転免許などの無表情な証明写真、そして遺影(これは別の意味で無表情だが…)まで、とにかく様々である。こうした「肖像写真」は従来、被写体のひととなり(または顔の造作)を伝える手段として使われてきた。

しかし最近は、美容整形やデジタル・テクノロジーの発達で、直間接的に顔の造作を変形・改良させたり、皮膚や目、髪の毛の色など自由に操作できるようになった。

そうすると、今までレンズを通して被写体のありのままを伝えてきた肖像写真はどうなるのだろうか。加工された顔写真を見る者はどうやって真実と虚実を見極めるのだろうか。ロンドンのヘイワードギャラリーで先月24日から開催されている展覧会「About Face – 顔について」は肖像写真の今後のあり方を探る意味で興味深い。

70人以上の作家の作品を100点以上を7つのテーマを設けて展示しており、数の多さを感じさせない。特に「加工した顔」を被写体にした写真には、そのプロセスの面白さからうまれる偶然を楽しむものから、政治的なメッセージを含めたものまで、様々だ。中でも目立った作品を紹介する。


Alison Jackson / Charles, Camilla and Diana, 1999 © the artist

英王室の故ダイアナ妃が生前中、チャールズ皇太子に年上の愛人、カミーラ夫人がいたことはすでに周知の事実。アリソン・ジャクソンは、三人のそっくりさんを使って虚構の場面を「ノゾキ」写真のごとく撮っている。いや、もしかして故ダイアナ妃がこうして夫の愛人に言い寄ったことが実際あったのかもしれない。本当に虚構なのか、事実の「再現」なのか、判断がつかなくなる。


Valerie Belin / Untitled, 2001 © the artist 2001


Valerie Belin / Untitled, 2003 © the artist 2003

ヴァレリ・ベリンは、マネキンとモデルの外見が良く似ていることに気がつき、それぞれの写真を並べて展示している。人間の顔が限り無く個性を失い、人工のマネキンに近づいていく。さあ、この2枚のうち、マネキンはいったいどちら?


Aziz + Cucher / Rick from the series DYSTOPIA, 1994 © Aziz + Cucher 1994/2004

デジタル処理を施して顔の造作を取り去った作品。いわゆる「のっぺらぼう」だが、まるで皮膚という包装紙にくるまれた物体のようである。人間の個性を形作る顔の造作が無くなると、一体どうやってアイデンティティーを維持するのだろう?


Tomoko Sawada / ID 400

1分間撮影で気軽にとれるパスポートサイズの証明写真。一人のモデル(作家本人?)が、100通りに扮装しているが、1回に4枚撮れることから、タイトルにある400ものID(アイデンティティ)に繋がるのだろうか。しかしどれをとっても全て元は同一人物。一体どれが一番本人に近いのだろうか。そしてもし私が同じことを試みたとして一体幾つのアイデンティティをみつけることが可能なのだろう…。

アイディアやコンピューター処理などの技術を凝らした作品が大半を占めていたが、会場の一角にはそのまま顔を捉えた作品も展示されていた。しかし被写体は奇形児らしき子供の頭部や肌に無数の黒い斑点がある女性、はたまた既に亡くなった人(つまり死体)がきれいに着飾り、目を閉じて安らかな笑みをたたえているなど、見るうちに居心地の悪さを感じずにはいられなくなる。対象となった人物の心の内まで伝わって来てしまうのだ。結局、一番インパクトが強いのは、こうした「ストレート」な作品であるような気がした。


About Face – 顔について

会期:2004年6月24日〜9月5日
会場:Hayward Gallery
住所:South Bank Centre, London SE1 8XX
TEL:08703 800 400
www.hayward.org.uk

Text and Photos: Sari Uchida
Photos: Courtesy of Hayward Gallery

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