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サッチ

HAPPENING


80年代は、常に僕に影を落とす。見えない形で心の中に。自分の表現活動に「80年代のテイスト」をなんてことは考えたこともないし、どちらかというとそういう記憶が恥ずかしい。世のトレンドも「70年代リバイバルの次は80年代!」というのを耳にするとドキドキしてしまう。でも、なかなか本格的80’Sリバイバルが来ないのは、今、カルチャーを作りだす第一線で働く人達が、80年代カルチャーを僕と同じような気持ちで、少々気恥ずかしさ感じているからかもしれない。

80年代は、確かに景気の良い時代であり、コラム文化、DCブランド、MTVなどのキラキラしたイメージがあった。その良い影響も受けた反面、ひどく業界然としたものが、一般的になっていって、同時にカルチャーも非常にキメ細かな「区別」が進行していった。区別とはジャンルであり、ジャンルの細分化は、みんなで共有できる文化の「気持ち」というのを忘れてしまった。僕も当然、特定の「シーン」のなかの「住人」になるために、自分ではロクに読めない海外雑誌から、ニューアカデミックの本、ヨーロッパのマイナーなレーベルの実験的な音楽や、その他の表現を探し歩いた…。これらの経験はムダだとは思わない。「知識」という部分では今でも「力」となっている。

でも、「メンタル」という部分で自分の表現活動をするなかで、ナチュラルな姿勢でいられない、妙に脅迫観念的な気持ちになってしまう。距離を常に置き、力を抜いてリラックスしたモノ作りができない。その力の源の情熱が、ハツラツとして健康的で元気なものなら、オッケーなのだが「あくまで表面はクールにしなければ」という変にカッコつけのおかげで、空まわりすることもある。ナチュラルなスタンスでの表現ができない。それは、僕が80年代からもらった影を落とす気分だと思う。僕はナチュラルを目指すなら、せいぜいドライ・フラワーで終わるだろう…。そんなことを僕に感じさせたこれから行われるイベントを紹介しよう。

札幌在住の「音楽」・「写真」・「言葉」を担当する3人の主催で、『サッチ』というイベントが行われる。「サチ」という架空の女の子を設定し、それぞれの表現の媒体を用いて「日常」を表現するという3人のコラボレーション・イベントだ。3人は、高校のオーケストラ部で出会って以来、10年以上の付き合いになる友人同士。「なにか面白いことしたいね」と思い、いろいろなコトを共に活動してきた。今回はある者は音楽が、またある者は写真が、もう一人は文章が、とても好きで、個々の楽しみを持ち寄ったら、そこにはまた違った楽しみが生まれるのではないか?ということで、このイベントは生まれた。当日は「音楽・写真・言葉」を共有する空間を観客に対してプロデュースされる。

最後に主催者のひとり佐藤氏にイベントの構成について、いただいたコメントを紹介しよう。これを読んで新しい「表現」のスタンスを感じさせるものだと、僕は感じたのだ。

「時間的にも、空間的にも、どこかに特異点を作ってしまうような構成をしたくない、と考えています。たとえば、もし、このイベントの途中にライブ演奏があったとすれば、ライブの時間とステージの空間が、特異点になってしまいます。時間について言えば、ある時間帯に特別な山場を設けることはしません。イベントの開始から終了までいなくても、どの時間帯であっても、おおむね同じように楽しむことのできるような、ゆるやかな持続を目指したいと考えています。空間について言えば、誰もが同じ方向に目を向けて、同じものを見ている、というような、単一の指向性は避けたいと考えています。……という説明だと、「構成がない」ように思われるかもしれませんが、構成をしないのではなく、「可能な限り強制を排した構成」を目指しているということです。「サッチ」に関して僕たちは、それをアートであるとか、カルチャーであるとか、そういうふうには思っていなくて、日常のなかの「なにか面白いこと」のひとつと捉えています」。

以上のテキストを繰り返し読むたびに、2000年を乗り越える自然な表現のスタンスを感じる。でも、良くも悪くも僕は表現者として80年代的脅迫観念からは離れることはできないだろう。だけど、ひとりの観客として「サッチ」を楽しみに行きたい。

[サッチ] 音楽・写真・言葉のコラボレーションイベント
日時:2004年5月28日(金) 19:00〜
会場:中村楽気店
住所:札幌市中央区南2条西4丁目
料金:1000円
出演:信藤舞子(音楽)、佐々木夕介(写真)、佐藤直彦(言葉)
http://www.walnut.jp/such/

Text: Shinichi Ishikawa from Numero Deux

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