ビジュアローグ

HAPPENINGText: Erika Saca

10月8日。会場は、期待に胸を膨らませる何千人もの観客で溢れていた。伝統的な能の太鼓と笛が私たちを20世紀のイコグラダ・コングレスへと歓迎してくれた。ビジュアローグがいよいよ始まった。


ビジュアローグのスタッフが会議場のあちらこちらで、生きた看板として機能していた

伝統的なパフォーマンスの後、日本のグラフィックデザイナー福田繁雄は、ビジュアローグの内容を簡単に紹介してくれた。デザイン界の巨匠の作品と、ダイナミックなエレクトロミュージックのコラージュは、興奮を掻き立て、遠いアメリカからここまでやって来た価値があったと、時間が過ぎるにつれて確信した。すぐに、時差ボケから醒め、それは興奮と期待へと変わった。


能のパフォーマーが沈黙を破り、私たちをビジュアローグに迎えてくれた

今年の会議のテーマは「情報の美」。また、それは情報の美に向かう道筋として、分かりやすさ、独創性、笑いという、3つのサブテーマで分けられていた。さて、ここからヴィジュアローグのハイライトを紹介したいと思う。

10月9日。名の知れた情報アーキテクトの、リチャード・ソール・ワーマン(アメリカ)は、初日のレクチャーとプレゼンテーションを始めるにあたって、演説をした。彼曰く、最も重要なのは会話だという。レクチャーのノートより何よりも、会話こそ重要視すべきことなのだ。本当に大事な記憶が、会話によって残すことができるのだ。


情報の質について議論するパネルディスカッション

ワーマン(アメリカ)、グラフィックデザイナーのキャサリン・マッコイ(アメリカ)、平野敬子、原研哉らで構成された講師団が、情報の美についてディスカッションをした。それぞれが、彼らのデザインでメッセージを伝える為に、どのように情報を使うのかということをそれぞれの作品を例に挙げて説明した。

原研哉は、日常の物にひねりを加えて、見慣れたもの、または見慣れないものを作る重要性を述べた。平野敬子はデザインの美について話した。彼女は、「美は神の道」と述べる。寺のビデオを見せた後、彼女の「MOMAT」という作品の制作過程について話した。

ワーマンは、デザインの使命は、メッセージを運ぶことだと言う。そこには、“どう” 伝えるかという手段は沢山あるが、“何を” 伝えるのかは、たった一つだ。『それが私たちに課せられた、問題なのだ。』と述べる。“何を”というのは、メッセージ、情報そのもので、“どのように” というのは、その質だ。どのように、“何” を伝えるべきだろうか。

グラフィックデザイナーの石岡瑛子は、(いや、エンタテイメントデザイナーと呼ぶべきか、あるいは、アートディレクションかまたは…?)


映画「ザ・セル」のコスチュームデジザインについて話す石岡瑛子

別の次元に入りこんでしまったような感じだった。私は、石岡瑛子の心の中を旅しているかのように思えた。彼女のプレゼンテーションの始まりは、自身の作品のショー・リールだった。ミステリー映画にぴったりな音楽で、私たちは椅子の端にしがみつかずにはいられなかった。


「シルク・ドゥ・ソレイユ」のコスチュームデジザインについて話す石岡瑛子

「シルク・ドゥ・ソレイユ」、「ザ・セル」、「マダム・バタフライ」、「コク−ン」などの作品を披露した後は、自身のデザイン論を語った。『エンタテイメントデザインが面白い』と、彼女は語る。彼女は、デザインをパフォーマンスと考え、その内容を伝えるために、表面上の美が必要なのだと言う。彼女は、自身をフリーアーティストと呼び、デザイナーに肩書きをつけるのは、無意味だと主張する。

彼女は、デザインは生きていると考え、最も重要な要素は、1に感情、2に感情、3に感情、と述べる。

アーティストとして生き残るためには、我々は皆、オリジナリティが求められる。そのために、彼女はオリジナリティを保つために、クリエーターとチームを組み、新しいもの、エキサイティングなものを生み続けているのだと言う。

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