ビーナス・プロジェクト展

HAPPENINGText: Gisella Lifchitz

『プロジェクト自体が技術的なものではなく、全ての人が参加できるようなコンセプトが、要望や希望を実現できるか否かが一番重要なポイントです。それには、お互いが協力しあう姿勢が大切です。現在は、企業や州からの援助を受けているので、このプロジェクトが一歩先を行った、そして他のセクターとも直接結びついた存在でいられるのだと思います。お金は、交流やコラボレーションを企画する際の、一種の尺度でもあり、かなり決定力が強いものだと解釈しています。アーティスト自体が、他のアーティスト達の作品から刺激を受けるような、そんな根本的なプロジェクトです』と語るのは、スタート・ファンデーションの実行委員長でもあり、バーサス・プロジェクトのキュレーターでもあるロベルト・ジャコビー。

だからこそ、批評も多く厳しい状況下においても、260組のグループ(この数字は現在も増加中)が生き残ることができているのである。作品を交換したり、講議を開いたり、それを受けたり、何かを作り上げたり、雑誌に寄稿したり、わくわくしてしまいそうなプロジェクトを始めたり、ポップミュージック・バンドを再結成したり、作るのを決して止めなかったり…。そういったこと全てが、遊び心満載の創造性豊かな精神で行われているのだ。そしてそこには、全てに共通する究極の答しかない。

昨年私は、とても不思議な祭典に参加した。遥か昔に発行された雑誌、世界中から集められたユニークなキャンディー、写真のコピー、かっこいいビンテージものの古着、フランス語講座などが、一挙にひとつの場所に集められているのだ。その祭典が行われているビルの2階では、この祭典でアシスタントとして活動している人たち全員の肖像画を描く人の姿も。誰かを捕まえては、その人にとって最高の笑顔をするように強要していた。また階下では、当時成長株だった、ポーレンというバンドを発見。数名の少女達が、この不思議なバンドを囲んでいたが、彼女達以外、オーディエンスの姿は見当たらなかった。

日を追うごとにプロジェクトはその規模を拡大していく。ビーナスのメンバーが今憧れているのは、快楽主義と、人生を楽しんでいる様を写真として収めてもらうこと。ビーナスという団体は、一体何なんだろう?そんな疑問が自然に沸いてくるが、その実態を掴めている人は誰一人いない。私達の誰もがビーナスの一人になることができ、お金や抱えている問題など関係なしに美の世界を共有できるのだ。必要なのは、自分らしくいることのみ。ヒッピー精神を取り戻した人たちが、希望のかけらもない大地に新しい種を自由に蒔くことができるのが、それがビーナスなのである。

Venus Project
日時:2003年5月12日
会場:MALBA
住所:Av. Figueroa Alcorta, 3415 Buenos Aires
TEL:+54 11 4808 6500
https://www.malba.org.ar

Text: Gisella Lifchitz
Translation: Sachiko Kurashina

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