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ロン・ミュエック展「メイキング・スカルプチャー」

HAPPENINGText: Tim Spear

ロンドンの中心部、トラファルガー広場にある美術館、ロンドン・ナショナル・ギャラリー。ここでは、 1990年から優れたアーティストを招待し、美術館のコレクションとしての作品を制作してもらう企画が行われている。そのアーティストとして最近選ばれたのが、彫刻家のロン・ミュエック。1997年にロイヤル・アカデミーで開催された「センセーション」展で「死んだ父」という彫刻を発表したことでその名が知れ渡ったアーティストだ。

ロン・ミュエックの作品は人体をかたどったものが多く、主にシリコンやファイバーグラスで作られている。特殊効果制作のバックグラウンドを持つミュエックの作品は、本物の人間と見分けがつかない程、なかりリアルだが、唯一の相違点は、作品は息をしていないということだ。


Ron Mueck, Swaddled Baby, 2002, Mixed media, 18.4 x 21.5 x 49.5 cm

今回の展覧会用にミュエックは新作4点を制作した。誕生と母性というテーマをやんわりと感じさせる作品だ。会場を順番通りに歩いていくと、出産のプロセスが逆回りで紹介されているのに気付く。それを証拠に、まず最初に目に入ってきたのは「細長い布で巻かれた赤ちゃん」という作品。おくるみで包まれた赤ちゃんが、枕の上で眠っている。全作品の中でも、実物大で表現されているのはこの作品のみ。とにかく細部に至るまで、ミュエックが生み出した赤ちゃんは本物そっくりだ。彼の赤ちゃんキリストには現実味があるし、本当にかよわい命がそこに宿っているような、そして、まだ見ぬ未来さえもその赤ちゃんから感じてしまうようなたたずまいなのである。


Ron Mueck, Mother and Child, 2002, Mixed media, 24 x 89 x 30 cm

更に奥へと歩みを進めていくと、「母と子」という作品が見える。全長89cmの母親が、たった今出産を終えた様子を表現した作品だ。赤ちゃんは、胎児時代にいたかつての定位置に横たわっており、そのことで母親のお腹はややしぼん見える。そしてその赤ん坊を静かに見つめる母。その母の髪の毛が出産のために乱れ、汗をかいている様子、そして肌の色も本物の人間とそっくりで、完璧な程のリアリズムが強く感じられた。

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