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ポリフォニック・スプリー

PEOPLEText: Alistair Beattie

ポリフォニック・スプリーはとてもユニークな存在だ。当初はマーキュリー・レヴや、ザ・フレーミング・リップスと比較されたりもしたが、結局のところそれは彼らにとっては何の得にもならなかったし、バンドとしてのムードを捕らえることにもつながらなかった。私にとって彼らの存在は、もしブライアン・ウィルソンが自分のバンドを持っていなければ、入りたいと思うような、そんな趣のある団体である。

必要以上に鼻につくのではなく、彼らの音楽はスピリチュアルなものだし、キリスト教のものであることも納得している。しかし特筆すべきなのは、彼らは一切、神に関する言葉を使っていないことなのだ。一風変わった人達だな、と判断を下してしまうのは簡単なことだ。しかし、彼らはそれ以上の存在ではないのかと私は思うのである。何がそれほどまでに強く感じさせるのかというと、それは彼らの活動、それを行う理由、そしてメンバーそれぞれに彼らの信じる気持ちが深く根付いているからである。今のロンドンのすたれた、冷笑的で、新しいものばかり求めるポップカルチャーの奥底で、彼らは信じられないほどの光を放つダイアモンドのように輝き、人生を謳歌しているのだ。

このプロジェクトはティム・デローターにより発足し、白い礼服に身を包んだ26人が集まった。様々な特技、楽器経験を持つ人たちが集まったこの団体。曲の中からは、音が混ざり高まるのが感じられる。トランペットがフルートに反応したり、トロンボーンがキーボードとダンスをしたり、ベースの音に魅了されたり。常に唄い、手を空高く挙げ、ジャンプを繰り返しているのだ。歌詞の中では奨励、望みと結束を求める言葉が書かれている。これほど多くの人たちがステージ上に立っていても、フルクサスの彫刻のようなうるささを感じさせるようなポスト・モダン的な音を奏でるのではなく、そこには達成するということに対する明確な感覚があるのだ。大胆でパワフルな彼らの詩は、あなたを平凡から連れ出してくれるのだ。

経験する、という言葉こそ、ここでは適切なもではないだろうか。「バンドを見に行く」という考えでは、どうにもしっくりこない。私はレコーディングされた彼らの曲は聴いたことはないが、しかしここには、ステージのために何か生き物がいる感じがするのだ。ステージは静かなものではないし、複雑なものでもない。ロックコンサートよりもブロードウェイのレビューのようにも感じられる。しかしこのようなことを誰が気にするであろうか?ジャンルを超越したもの、他のものとは異なり、大胆なステージ。そして彼らはその要素と共に成長し、訪れるいたる場所でファンや友だちを増やしながら世界中を回っているのだ。彼らがそう望むように、地球規模に拡大してほしいと私も願っている。

ショーが始まる前に、ティムがバンドについてのビジョンを語ってくれた。『世界一のミュージシャンになるためにこのバンドがあるわけではありません。音楽を通じて自己表現をするために私達はいるのです。』まさにその通りである。彼らのライブは必見。

Text: Alistair Beattie
Translation: Sachiko Kurashina

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