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「偶像破壊」展

HAPPENINGText: Timo Linsenmaier

もしかしたらこれは、「展示破壊」と呼ばれる方が適切かもしれない。ドイツ、カールスルーエのアート&メディア・センターZKMで現在、「偶像破壊」展が開催されている。

マンフレート・ウォルフ・プロッテグスがデザインしたこの建物では、どうしても迷ってしまう。バルコニーを越えて「音楽破壊」と題したオーディオインスタレーション(そのコンセプトは楽しめるのだが、それ以外の点ではトピックに順応しているか疑問が残こる)まで続く廊下を見つけたとしても、まだ動揺が残ってしまっている。斜めの階段を降りて、様々な黒い四角で形成された展示会の中心に降りてきても、どちらへ進めばいいかが解らなくなってしまうのだ。展示ホールの空​​間に一定のリズムを持たせようとする銀色に輝く三角形の柱は、訪問者に様々な種類の「偶像破壊」を理解して発見するのを助けるのではなく、むしろ曖昧さに貢献しているように思える。


Martin Kippenbergers, Modell Interconti, A 1972 Gerhard Richter painting, wood frame, metal legs, 13 × 31.3 × 23.7 inch, 1987

とにかく、最もインパクトが強く、面白いオブジェクトと作品は、通路にあった(しかしガラスケースに入った状態で展示されている為、やや迫力には欠ける感じがした)。会場の中央にぽつんと置かれていたマルティン・キッペンベルガーの素晴らしい作品「モデル・インターコンティ」(1987年)は、一見、工場によくある小さいテーブルの様に見えなくもないのだが、キッペンベルガー自身が、1972年にゲルハルト・リヒターのグレー一色の抽象絵画を購入し、額を追加して脚を付けたものだ。キッペンベルガーは、リヒターの熱心なコレクターでもあるのだが、絵画をテーブルのような彫刻に変えたこの作品を、リヒターの価格よりもはるかに安い価格で販売した。

特にスイス出身の偉大な美術史家、ダリオ・ガンボーニの「ロシアのコーナー」は、特筆すべきだろう。彼は旧ソビエト連邦の政治的記念碑の運命を探究した人物だ。クレムリン近くのモスクワの市内中心部に今日再びされた救世主ハリストス大聖堂の歴史は、ソビエト国家と今日の正教会の両方にとって、全く別の出来事には思えない。これは、政治においての記念碑の芸術の発展の例を示している。1931年にスターリン政権の下で、ソビエト大宮殿建設のために大聖堂は爆破された。しかしすぐに、スターリンの死去などの要因が重なったことにより、宮殿建設は中止となったが、これはロシア正教会の象徴的建造物を破壊しその跡地にソビエト宮殿を建設することで、別の意味での象徴的意味(無神論の宗教に対する勝利)を示すことを企図していた。

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